前のページでは、イヤホンが耳からポロっと落ちない対処方法について書きましたが、ここでは、その対処法の一つである「他社のイヤーピースに変更する」という項目に焦点をあて、イヤーピースの種類や、おすすめのイヤーピースについて書いてみたいと思います。
低反発とシリコンイヤーピース
イヤーピースとはイヤホンの先端に付いているゴムのようなもののことですが、100円均一ショップで売られているものもあれば、素材や形状にこだわったちょっと価格の高めのものまで、かなりたくさんの種類があります。
SMLなどのサイズがありますが、これもメーカーによっては、大きさが大分違う場合があります。下の写真は各社のLサイズを並べたものです。
かつて私もイヤホンのフィット感や音質に悩み、たくさんのイヤーピースを購入しましたが、その中でもフィット感や、音質向上を見込めるイヤーピースをいくつか紹介させていただきます。
ただ、基本的には購入したイヤホンに付属しているイヤーピースの使用をおすすめします。
それは、メーカーの狙った音・聴いてもらいたい音は、付属のイヤーピースによって設計されているからです。
イヤーピースを変更するとフィット感だけでなく、音質も変わります。
モノによっては、イヤホンを買い替えたぐらい音の傾向が変わることがあります。
イヤーピースの種類は、大まかに分けると、低反発系とシリコン系に分かれます。
以下に、それぞれのイヤーピースの音質変化も含めた特徴を記載しますので、その中から自分に合いそうなイヤーピースを探してみてください。
低反発素材のもの
低反発素材のイヤーピースは、ウレタン素材を使用したイヤーピースで、フォームイヤーピースとも呼ばれ、耳に挿入する際に指で潰し、耳の中でそれが徐々に膨らんで、各々の外耳道の形で固定され、耳の穴を塞ぐというものです。
非常に柔らかい素材のため、耳への負担が少なく、耳栓と同様の高い遮音性とフィット感を得ることが出来ます。
柔らかいながらも、耳の穴の形にピッタリとフィットするため、歩行時にイヤホンが耳からずれて来る、又は外れるといったケースは、かなり低減されます。
その反面、装着する際に手間がかかるのと、耐久性に乏しいというデメリットもあります。
ここでは、コンプライとSHURE(シュア)というメーカーのイヤーピースを紹介します。
コンプライ
米軍の軍用耳栓をイヤホン用にしたもので、コンプライのイヤーピースは、綿菓子のような非常に柔らかい作りになっています。
そのため、数あるイヤーピースの中で、耳への負担が一番軽いイヤーピースだと思います。
コンプライのイヤーピースは、細長タイプ(Tシリーズ)と球形タイプ(Tsシリーズ)の2種類があります。下の写真は左がTシリーズ、右がTSシリーズです。
細長タイプは、耳の奥の方まで入り込むため、耳との接地面積が広くなり、遮音性が格段に上がりますが、耳の穴の形状によっては、先端部分がつぶれて高音部が出にくくなり、低音過多のこもり気味な音になる場合があります。
球形の場合は、先端つぶれが起きにくいので、キレイな高音が出ますが、細長タイプより接地面積が少なくなるため、遮音性は細長タイプよりも若干劣り、クリアな音質傾向になります。
より高い遮音性と音の力強さを重視する場合には細長タイプ、適度な遮音性とすっきりした音を楽しみたい場合は球形タイプを選択されると良いと思います。
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SHURE(シュア)
SHUREの場合は球形のみで、その形が銃弾に似ていることから、弾丸と呼ばれることもあります。
コンプライに比べて、少し硬めで密度の高い感じがありますが、そのおかげで、コンプライよりもガッチリはまっている感覚があり、より耳から抜けづらいです。
コンプライの耐久性は、毎日使うと想定すると、せいぜい1か月、もったとして2か月程度ですが、SHUREの弾丸は、その倍ぐらいの耐久性はある感じです。
難点は、Lサイズを使用する場合で、MとLの差が大きく、Mがもうちょっと大きければいいなと思っている方がLサイズを使用すると、大きすぎて耳が痛いと思うかもしれません。
遮音性はコンプライの細長タイプと同様に高く、その音質はクリアで、かつ、しっかりとした厚みのある音が出ます。
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シリコン素材のもの
一般的なイヤーピースは、このシリコン素材を使用したものです。
シリコン系イヤーピースの種類は豊富で、傘や茎の部分の柔らかさ、高さ、幅、形状といった細かい部分が、メーカーによって異なります。
一概にそうとは言えませんが、イヤーピースの厚みや音の出口である穴の大きさによって、以下のような音になる傾向があります。
- 傘の部分が薄いとすっきりとした芯を聴かせる低音が出る
- 傘の部分が厚いと弾力のある低音が出る
- 出口の穴が小さいと全体的にまろやかな音になる
- 出口の穴が大きいと全体的に明るめの音になり音場が広がる
ここでは、SONY、SHURE、WESTONE、JVC、茶楽音人(さらうんど)のイヤーピースを紹介します。
SONY
2つのイヤーピースを紹介します。
1つ目は「ハイブリッド・イヤーピース」
音の出口の穴はやや小さめで、傘の部分は薄く柔らかいため、装着した時の違和感や耳への負担が少なく、イヤーピースを初めて交換してみようと思われている方に、一番最初に使ってみてもらいたいイヤーピースです。
このイヤーピースは、サイズがSS,S,M,L,LLと種類が豊富で、付属イヤホンから付け替えても音質変化はあまり大きくないため、音質はそのままで、フィット感のみ改善したい場合におすすめです。
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2つ目は「トリプルコンフォートイヤーピース」
先程のハイブリッドイヤーピースより少し高さがありますが、出口の穴の大きさは同じです。
傘の部分は厚みがあり、シリコン素材でありながら表面の質感と触れた感触はフォームイヤーピースのようです。
全体的に音が力強くなり、かつクリアーな傾向になります。
シリコンとフォームのいいとこ取りをしたようなイヤーピースで、遮音性は高く、フォームよりも耐久性があります。
遮音性、音質の向上を求める方には一押しのイヤーピースです。
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茶楽音人(さらうんど)
2つのイヤーピースを紹介します。
1つ目は「SpinFit」(スピンフィット)
傘の部分は柔らかめ、出口の穴は大きめです。
一番の特徴は、茎と傘の付け根の部分にくびれがあり、外耳道のカーブに沿ってイヤーピースの先が自然に曲がり、茎の部分のつぶれを解消しています。
このおかげで、クリアな中高音、締まった低音が出るため、現在使用しているイヤホンのこもりを解消したいと思っている方におすすめです。
ただ、このイヤーピースは耳の穴の入り口を塞ぐというよりは、耳の奥(外耳道)に突っ込むことにより、その効果を発揮するタイプのイヤーピースなので、人によって装着感の合う合わないがあるかもしれません。
なお、この「SpinFit」はSHUREのイヤホンのようなノズル径の細いものと、通常の大きさのものの2種類があります。
ノズル径の細いものは「SHURE用」のような表記がありますので、お買い求めの際は注意してください。
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2つ目は「SpinFit Twinblade」(スピンフィット・ツインブレイド)
このイヤーピースは傘が2段になっていて、1段目と2段目のつなぎ目に先程の「SpinFit」同様のくびれがあります。
大きい傘の部分は少し厚みがあり、小さい傘の部分はかなり薄めです。
装着方法は先程の「SpinFit」とは異なり、大きい傘の部分で耳の穴の入り口を塞ぐような感じになります。
この2段式と異なる傘の厚みにより、「SpinFit」同様のクリアですっきりした音に、重みのある低音が加わり、遮音性も上がります。
1段目の傘が外耳道に入り込むため、装着感に違和感を感じる場合もあるとは思いますが、音質向上は顕著なので、是非試していただきたい逸品です。
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JVC
「スパイラルドット」というイヤーピースを紹介します。
傘の部分は少し弾力のあるで、出口の穴は大きいタイプです。
茎の内部にらせん状の小さなくぼみがあり、これが音のにごりを抑える効果があるようですが、これに関してはどの程度の効果があるのか何とも言えないところです。
ただ、幅の広い形状により耳をしっかりと塞ぎ、出口の穴が大きいことから、量感と弾力のある低音と、少し強調された高音により、ノリ良く華やかに音楽を楽しむことが出来ます。
サイズもS,MS,M,ML,Lと豊富なラインナップになっています。
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SHURE
SHUREには様々なタイプのイヤーピースがありますが、ここでは「トリプルフランジ」というイヤーピースを紹介します。
傘が3段になっており、より耳の奥にイヤーピースが入り込むことによって、高い遮音性とダイレクトな音が特徴のイヤーピースです。
特筆すべきは、その遮音性で、フォームイヤーピースやノイズキャンセリングイヤホンと同等、若しくは、それ以上に外の音を遮断します。
音はダイレクトに伝わる感じですが、外耳道のカーブがきつめの方の場合、茎の部分がつぶれ気味になり、音の輪郭が丸くなる傾向があります。
イヤーピースが長く、そのままの状態で耳に違和感なく装着できる方は、ほとんどいないと思います。
1段目の小さな傘をカットして2段にしたり、茎の根元の部分を少しずつカットすることにより、自分にピッタリ合った形状にして使用してください。
高い遮音性とキツめ音を出す傾向のイヤホンの音質改善目的の方におすすめのイヤーピースです。
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WESTONE(ウェストン)
「STARシリコンイヤーチップ」というイヤーピースを紹介します。
他のイヤーピースに比べて高さがあり、出口の穴は少し大きめです。
イヤーピースに高さがあるため、耳の穴の位置口から外耳道までフィットし、そのおかげで高い遮音性を誇ります。
イヤーピースと耳の設置面積が大きく、音の出口は比較的大きいため、力強い低音と華やかな高音が特徴的です。
高い遮音性が欲しいけど、SHUREのトリプルフランジは合わないという方におすすめです。
サイズもXS,S,M,L,XLと豊富なので、自分に合ったサイズを見つけやすいと思います。
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その他の注意事項
イヤホンのノズル(イヤーピースを挿す部分)は、細目のものと太めのものがありますが、メーカーによっては両タイプのイヤーピースを発売しているところもあれば、一方のみしか発売していないところもあります。
SHUREやWESTONEはノズル径の細いものしか販売していないので注意してください。
ノズル径が細いイヤホン用に作られたイヤーピースをノズル径の太いものに挿すことはできませんが、その逆の場合は、アダプターを使用することにより装着が可能です。
例えば、SHUREのイヤホンにノズル径の大きなイヤーピースを装着する場合、使用しないサイズの付属のイヤーピースの茎の部分を切り取り、それをアダプターとして利用できます。
装着方法については、SpinFitやトリプルプランジ等、耳の奥へ突っ込むタイプのイヤーピースを使用する場合、普通に押し込んでも入りづらい時があります。
この場合、耳たぶを下に引っ張りながら挿入すると、すんなりとイヤーピースが入って行きます。
まとめ
色々紹介しましたが、フィット感の改善を求めて初めてイヤーピースを交換するという場合のおすすめは、SONYのハイブリッドイヤーピースとコンプライの球形タイプ(Tsシリーズ)です。
SONYのハイブリッドイヤーピースは、サイズの豊富さと耳への負担が軽い形状・柔らかさがおすすめの理由です。
コンプライは、コストパフォーマンスでいうと良くはありませんが、どのイヤーピースよりも柔らかく、使う人の耳に合う形でフィットするので、抜け落ちにくく、耳への違和感も相当少ないため、どのシリコンイヤーピースを使ってもダメだったという人に、是非試していただきたいイヤーピースです。
慣れてきたら、音質向上目的で、その他の様々なイヤーピースを試してみてください。
イヤーピース変更による音質変化は大きく、リケーブルするよりも、その効果が分かりやすくリーズナブルです。