1975年に「二重唱(デュエット)」でデビューした岩崎宏美さん。
2ndシングル「ロマンス」では、レコード大賞新人賞を受賞するなど、デビュー当時から圧倒的な歌唱力を持ち、アイドルらしからぬという形容すらありました。
今回は、岩崎宏美さんのシングル曲を聴いてその歌声に魅了された方に向けて、岩崎宏美さんが70年代にリリースした8枚のアルバムの中から、シングル曲に勝るとも劣らないおすすめソングを紹介したいと思います。
岩崎宏美 70年代アルバムのおすすめ曲
岩崎宏美の当時の印象
「天まで響け」…そのキャッチフレーズの通り、岩崎宏美さんの歌唱力と感情表現は圧倒的で、当時、小学生だった私は岩崎宏美さんの歌声を聴いた時、衝撃を受けました。
この頃のアイドルというと、そんなに歌の上手でない可愛らしい顔をした若い歌手というイメージでしたが、岩崎宏美さんはデビューした時から音程やリズムが安定しているという基本的な部分だけでなく、艶やかで伸びのある天性の歌声と、時には感情を入れ過ぎて涙してしまうような感情表現に、その歌を聴いている自分も歌の世界に引きずり込まれたものでした。
そういうこともあり、私は当時から岩崎宏美さんについてはアイドルという認識はあまりなく、これから歌謡界の大御所となっていく新人歌手という目で見ていました。
ちなみに、岩崎宏美さんの愛称は「ヒロリン」ですが、子どもの頃は「チンチロミ」なんて呼ばれ方もしたそうです。その意味は…( *´艸`)
1st アルバム「あおぞら」(1975年)
収録曲は以下の通りです。この中から2曲紹介します。
- ロマンス
- はだしの散歩
- ささやき
- 私たち
- 二重唱(デュエット)
- 空を駆ける恋
- 愛をこめて
- 涙のペア・ルック
- 月見草
- 美しいあなた
- この広い空の下
はだしの散歩(作詞:阿久悠 作曲編曲:穂口雄右)
「二重唱(デュエット)」のテンポを少し落としたような曲調です。
後に筒美京平さん作曲の「センチメンタル」「ファンタジー」などはディスコ歌謡なんて呼ばれ方もしましたが、この「はだしの散歩」も作曲は筒美京平さんではありませんが、カッコよく動き回るベースライン等、ディスコ歌謡の雰囲気漂う曲です。
ささやき(作詞:阿久悠 作曲編曲:穂口雄右)
「ロマンス」より少しテンポを落としたような曲調で、「です・ます」調の歌詞や間奏に岩崎宏美さんの語りが入ったりと聴きどころ満載です。
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2ndアルバム「ファンタジー」(1976年)
収録曲は以下の通りです。この中から3曲紹介します。
「ファンタジー」(作詞:阿久悠 作曲編曲:筒美京平)
アルバム曲の紹介なのでシングル曲は入れないつもりでしたが、この曲だけは入れておきます。
「ファンタジー」は、このアルバムの3曲目に収録されている4thシングルです。
イントロのギターカッティングからただならぬ雰囲気で、ファンキーなリズムに、ちょっと不思議なマイナー調のメロディー、どこからサビなのかよく分からないような変わった曲の構成。
私は当時、「ロマンス」も好きでしたが、「ファンタジー」の今まで聴いたことのない不思議な音楽に衝撃を受け、岩崎宏美さんと言えば今でも真っ先にこの曲が頭に浮かんできます。
「ファンタジー」がディスコ歌謡と聞いた時、「どこがディスコなの?」っていう感覚でしたが、この当時と私がディスコを意識した80年代後半とはサウンドが違っていた訳で、「ファンタジー」がリリースされた頃のファンク&ソウルミュージックがディスコサウンドの主流だったことを考えると合点がいったものでした。
「パピヨン」(作詞:阿久悠 作曲編曲:筒美京平)
シングル「ファンタジー」のB面に収録されている曲で、このアルバムの1曲目に収録されています。
曲調は「ファンタジー」に似ていますが、こちらの方が曲構成が分かりやすく、テンポも「ファンタジー」よりも速めでノリの良い曲です。
サビを頭に持ってきた辺りもインパクト大です。
「愛よ、おやすみ」(作詞:ちあき哲也 作曲編曲:筒美京平)
この曲も上記の2曲と同様のソウルフルなリズムを感じることが出来ますが、メロディーはより哀愁を帯びています。曲終わりは、アウトロなしの歌でスパッと終わるアレンジも印象的です。
後に、香坂みゆきさんがシングル曲としてカバーしました。
余談ですが、イントロ部分がちょっと「宇宙刑事ギャバン」の主題歌に似ている気がしないでもないです(分からない方は、ごめんなさい)。
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3rd アルバム「飛行船」(1976年)
収録曲は以下の通りです。この中から3曲紹介させていただきます。
- 未来
- 地平線の彼方
- サマー・グラフィティ
- ワンウェイ・ラブ
- 夏からのメッセージ
- ケン待っててあげる
- 霧の日の出来事
- さよならがビショビショ
- 美しい夏
- 愛の飛行船
ワンウェイ・ラブ(作詞: 松本隆 作曲編曲: 萩田光雄)
ピアノ伴奏から始まる重々しいマイナー調の曲で、五輪真弓さんの「恋人よ」のような雰囲気があります。
アコースティックギターのカッティングを多用したかき鳴らしとオブリガードで入ってくるハープシーコードのチャララン~という音が、故郷と彼氏を捨てて旅立つ繊細ながらも強い決意を秘めた女心を象徴しているかのようです。
霧の日の出来事(作詞:阿久悠 作曲編曲:穂口雄右)
ミドルテンポのマイナー調の曲ですが、ベースラインのリズムがノリのよさを出しているせいか、哀愁というよりはカッコよさを感じます。
さよならがビショビショ(作詞:阿久悠 作曲編曲:穂口雄右)
「ファンタジー」同様、ギターのカッティングから始まるミドルテンポのマイナー調の曲ですが、「さよならがビショビショ」は、より歌謡曲然としています。
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4thアルバム「ウィズ・ベスト・フレンズ」(1977年)
収録曲は以下の通りです。この中から1曲紹介します。
- 悲恋白書
- 砂の慕情
- メランコリー日記
- わたしの1095日
- 平行線
- 学生街の四季
- パパにそむいて
- コンサート
- 花のことづけ
- 想い出の樹の下で
- 愛をどうぞ
- さよなら そして自由へ
この中から1曲紹介させていただきます。
パパにそむいて(作詞:阿久悠 作曲:三木たかし 編曲:田辺信一)
メジャー調(明るい曲調)のバラードです。
父親に紹介した自分の恋人を否定され、今まで父親に口答えしたことのなかった娘が、初めて父親に反抗するといった内容の曲です。
父親、娘、どちらの立場に立っても、この曲を聴いていると切なくなります。
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7thアルバム「パンドラの小箱」(1978年)
収録曲は以下の通りです。この中から3曲紹介します。
- 媚薬
- パンドラの小箱
- コントラスト
- パンドラの小箱(バリエーション)
- ピラミッド
- カンバセーション
- シンデレラ・ハネムーン
- 想い出は9月行き
- ミスター・パズル
- L
- 南南西の風の中で
- パンドラの小箱(リプライズ)
媚薬(作詞:阿木燿子 作曲編曲:筒美京平)
アルバムのオープニングを飾る「媚薬」は、お得意のマイナー調のディスコ歌謡ですが、テンポは遅めなので、ゆったりとした横揺れという感じの曲です。
怪しげな雰囲気のある伴奏と曲終わりの岩崎宏美さんとコーラスの2重歌詞の混じり合いが、アルバムジャケットのアラビアンな世界へと誘ってくれます。
パンドラの小箱(作詞:阿木燿子 作曲編曲:筒美京平)
サンバのリズムに哀愁のメロディーを乗せたような曲調です。
イントロのアラビアンな旋律、サンタナのようなねちっこい哀愁のギター、アウトロのフュージョン的なキメなど、このアルバムの中で最もインパクトのある曲だと思います。
サビ終わりの岩崎宏美さんが「アア~アア~」と歌うところは、魔法の絨毯に乗って空を飛んでいるかのような錯覚に陥ります。
ピラミッド(作詞:橋本淳 作曲編曲:筒美京平)
この曲は時々転調し、Aメロとサビでは全く雰囲気が異なります。
曲始まりは怪しげなマイナー調、サビのメロディーは非常にさわやかで、こういったコントラストが面白く魅力的な曲です。
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8thアルバム「10カラット・ダイヤモンド」(1979年)
7thアルバム「パンドラの小箱」のようにコンセプトを持ったアルバムです。
今までのアルバムとは違い、シングル曲は一曲も収録されていません。それだけ、このアルバムに賭ける情熱や完成度への自信の高さが伺えます。
いわゆる捨て曲といったものが一切ない印象を持ったので、「10カラット・ダイヤモンド」に関しては、特定の曲をピックアップせず、アルバムの作風について書いてみたいと思います。
収録曲は以下の通りで、各曲の概要も付しておきますが、作家人に関しては省略させていただきますのでご了承ください。
- スリー・カラット・ダイヤモンド(マイナー調とメジャー調が混ざる「シンデレラ・ハネムーン」のようなカッコいい曲)
- マチネへの招待(サンタナのような渋いギターとド派手なシンセの音から始まるミドルテンポの「女優」のような曲)
- 東京 – パリ(メジャー調のポップな曲)
- 麗しのカトリーヌ(ピアノ伴奏のメジャー調のスローバラード)
- めぐり逢い伝説(ベースラインがカッコいいマイナー調のノリの良い曲)
- 小夜曲(セレナーデ)(アコースティックなメジャー調のスローバラード)
- 水曜の朝、海辺で…(アレンジにオーケストラを使わないメジャー調のバンドサウンド)
- 哀しみは火のように(怪しげなメロディーとアレンジがカッコいいマイナーミドルテンポの曲)
- テーブルの下(ハープシーコードの速いアルペジオから始まる3拍子のマイナーミドルテンポの曲。間奏のギターがカッコいい。)
- 微笑の翳り(シンセの伴奏が印象的なさわやかなミドルテンポの曲)
歌詞とサウンドに新風を吹き込んだアルバム
作詞は三浦徳子さんと阿木燿子さんの二人のみで、各5曲ずつ詩を書いています。
このアルバムは、この二人による女性目線の恋愛模様を描いており、そのサウンドは今までの純然たる歌謡曲にニューミュージック的アプローチを施したような印象があります。
「東京 – パリ」「麗しのカトリーヌ」「水曜の朝、海辺で…」などの杏里さんが歌うようなニューミュージック的なメロディーライン、「めぐり逢い伝説」「小夜曲(セレナーデ)」 の後藤次利さんによるカッコ良くなまめかしいベース、フュージョンでよく見られる全楽器の音をリズムに合わせてピタッと止めたりするキメや跳ねるリズム。
このアルバムのアレンジに井上鑑さんは参加していませんが、ちょっと寺尾聡さんのアルバム「Reflections」を聴いた時の感動を思い出しました。
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まとめ
歌手の中には、歌はうまいけれども、時代に合った良曲に出会えずヒットに恵まれない方も多い中、岩崎宏美さんは色々な面で非常に恵まれた歌手だと思います。
令和に入った現在でも精力的に活動され、2019年8月21日には筒美京平さんのトリビュートアルバム「Dear Friends Ⅷ」がリリースされる予定です。
岩崎宏美さんの作品はまだまだ沢山あるので、上記で紹介したものをきっかけに、是非ご自身のお気に入りを見つけてみてください。