今回紹介させていただくハードロック名盤は、1997年にリリースされたROYAL HUNT(ロイヤル・ハント)の「PARADOX(パラドックス)」というアルバムです。
ROYAL HUNTとROYAL HUNTの音楽性
ROYAL HUNTとは
ROYAL HUNTは、1988年に結成されたデンマークのハードロックバンドで、アンドレ・アンダーセンというキーボード奏者を強力なフロントマンとするクラシカルな曲調が特徴的です。
1992年に「Land Of Broken Hearts」でアルバムデビューし、途中で活動休止を挟みながらも現在も活動中で、2018年には14thアルバム「Cast in Stone」をリリース。
レインボーやイングヴェイ・マルムスティーンといった強力なフロントマンがいるバンドは、メンバーが流動的な傾向がありますが、ROYAL HUNTもその類です。
イングヴェイ・マルムスティーンのアルバム「Trilogy」でボーカルを取っていたマーク・ボールズもROYAL HUNTに在籍していたことがあります。
ROYAL HUNTは非常に個性的で、他に似たバンドはあまりなく、音を聴けば一発でROYAL HUNTだと分かります。
ROYAL HUNTの音楽性
- ギター、キーボードの旋律がクラシカルで美しく、ソロパートのみがクラシカルというよりは曲全体がクラシカルな作りになっている
- 歌メロがキャッチー(口ずさめるような)なものが多い
- フロントマンがキーボーディストだけあって、キーボードの出番が多い
- コーラス、キーボードが分厚く、曲がゴージャスに感じる
- ミドルテンポ中心とした曲が多いが、キーボード、ギターの速弾きでハイテンションを保っている
- テンポチェンジや変拍子が入ることも多いが、DREAM THEATERのようなプログレハードロックではない
- キーボードのフレーズに手癖はあるが、メロディー構成は練られている
- 似たようなアルバムも多いが、リズム・音色の変化、時にはギターをフューチャー、SEや女性コーラスの挿入等、アルバムごとの工夫がみられる
- アルバムによって1~2曲インストがある
4thアルバム「PARADOX」レビュー
ボーカリスト D.Cクーパーの表現力が秀逸
3rdアルバム「Moving Target」からボーカリストがD.Cクーパーとなり、このアルバム辺りから美旋律に重さが加わり始めました。
以前のボーカリストも良かったのですが、取り立てて個性的というわけでもなく、バンド全体のサウンドの線の細さもあり、良質な北欧メタルという域を出られない感じでした。
D.Cクーパーは、低域から高域まで、艶と線の太さを保ったハードロック界屈指のボーカリストで、彼の加入によって、ROYAL HUNTサウンドの幅が広がりました。
「PARADOX」では、D.Cクーパーの胸に響くような魅惑的な低音から芯の太いハイトーンを堪能することが出来ます。
「PARADOX」レビュー
ROYAL HUNTに関しては良質な曲が多く、正直どのアルバムを紹介するか迷いましたが、この「PARADOX」がその後のROYAL HUNTのひな型となっていったように思えるため、「PARADOX」をおすすめアルバムとして選びました。
1~3rdアルバムまでは個性的な北欧メタルという感じでしたが、1997年に発表された4thアルバム「PARADOX」では、北欧メタルのイメージが薄まり、ヘビーでダークな哀愁アルバムといった様相に変化しました。
「PARADOX」は、宗教的なテーマを持たせたコンセプトアルバムで、歌詞の内容に合わせた曲作りやアレンジがなされており、曲順までもテーマの流れを意識した非常に凝ったアルバム。
歌詞の内容が分からなくても、アルバムを頭から最後まで聴けばその雰囲気は理解できると思います。
風雨のSEがフェードイン、アコースティックギターの爪弾き、低音の歌声…
こんな感じで「PARADOX」は始まります。
先程も少しお話ししましたが、「PARADOX」はダークでヘビーな雰囲気を持ったアルバム。
全編マイナー調(悲しげな曲調)で、ハイテンポな曲よりミドルテンポの曲が多いことから、こういった印象を受けると思います。
ここにクラシカルな美旋律が隙間なく散りばめられているので、ハードロックに哀愁を求める方にはドンピシャ!
「PARADOX」は、他のアルバムにみられるような過剰な速弾き、必要以上に長いソロ、キーボードの演奏過多といったアルバムのバランスを崩すようなアレンジが一切されていないのもポイント。
ボーカルの幅広い声域を生かした感情表現豊かな歌唱、所々に入る変拍子やテンポチェンジ、痒い所に手が届く絶妙なギターやキーボードのオブリガードなど、どの曲も退屈させない、テクニックとアレンジが絶妙に噛み合わさった最高のアルバムです。
まとめ
「PARADOX」は、映像のないドラマを見ているようなアルバムで、じっくり聴き込むアルバムとして最高出来となっています。
もし、ポップ的要素を含んだ北欧メタル的なものを聴きたい方は、1stと2ndアルバムがおすすめ。
1stアルバム「Land of Broken Hearts」には、プロレスラー蝶野選手の入場テーマ曲である「Martial Arts」という曲が収録されています。
ちなみに曲単体で個人的に一番好きな楽曲は、3rd Album「Moving Target」に収録されている「Last Goodbye」で、スピード感、ゴージャス感、抑揚のある曲調、D.Cクーパーの表現力と声域の広さを使い切った素晴らしい歌声を堪能することが出来ます。
興味を持たれた方は是非聴いてみてください(*^-^*)