今回は、Westoneの「STARシリコンイヤーチップ」をSHURE SE846に使用すると、どのような音質になるのか検証してみたいと思います。
Westoneのイヤーピースについて
Westone1,2,3,4といった、イヤホンの型番の数字が一桁だった頃のWestoneのイヤーピースは、ほとんどSHUREのイヤホンと同じようなイヤーピースが付属していました。
しかし、Westone10,20,30,と型番が二桁になってからは、完全なオリジナルのイヤーピースに変更されました。
一つは、シリコン素材の「STARシリコンイヤーチップ」。
もう一つは、コンプライ等でお馴染みの潰してから耳の穴で膨らむ「TRUE FIT FORMイヤーチップ」です。
「STARシリコンイヤーチップ」と「TRUE FIT FORMイヤーチップ」について
かつてWestone W30を所有しており、その時に全てのイヤーピースを試してみました。
シリコン、フォーム共に、各5種類のイヤーピースがあります。
大雑把にいうと、高さ違いのSサイズが2種類、高さ違いのMサイズが2種類、Lサイズが1種類という感じです。
大きさの判別は、イヤーピースの茎の付け根の色で判断できます。
黒が通常のSサイズ、青が高さのあるSサイズ、黄緑が通常のMサイズ、赤が高さのあるMサイズ、オレンジがLサイズです。
販売サイトによっては、黒をSSやXS、赤をMLやL、オレンジをLLやXLと表記しています。
サイズの種類が豊富なため、万人に合う確率は高いと思います。
フォームイヤーピースですが、コンプライに比べるとかなり硬めです。そして、潰し方や挿入のしかたによって、先端がつぶれ、音質に影響が出やすいです。
そのため、フォームイヤーピースに関しては、個人的にはおすすめしかねますが、シリコンイヤーピースに関しては、装着感と音質が秀逸なので、今回はこの「STARシリコンイヤーチップ」のみ紹介させていただきます。
SHUREのイヤーピースとの形状の違い
では、SHURE SE215speに付属している丸形シリコンイヤーピースと、WestoneのSTARシリコンイヤーチップの形状を比較してみます。
申し訳ありませんが、写真付きの大きさの比較については、今手元に残っているのはSTARシリコンイヤーチップのLサイズ(オレンジ)しかないため、SHUREのLサイズとの比較のみとさせていただきます。
なお、ここでは便宜上、STARチップの茎が黄緑のものをMサイズ、赤のものをMLサイズ、オレンジの一番大きいサイズをLサイズとして、以下、記載させていただきます。
各サイズの実寸
下の写真は左から、SHURE(M),(L),WESTONE STAR TIP(L)です。
SHUREのシリコンイヤーピースとWestoneのSTARチップの実寸の比較をしてみました。
なお、SHUREのシリコンは球状なので、一番幅の広い部分を計測しています。
- SHURE(M) 幅 13mm 高さ 11.5mm
- SHURE(L) 幅 15mm 高さ 12mm
- Westone(M) 幅 12mm 高さ 11mm
- Westone(ML) 幅 12mm 高さ 14mm
- Westone(L) 幅 13.5mm 高さ 14mm
ちなみに、SHUREのトリプルフランジの高さは、21mm、一番上の小さな傘をカットしたダブルフランジの高さは、17mmなので、WestoneのMLとLサイズの高さは、他社製品には中々見られない、独特な高さになっています。
STARチップの大きさの選択についてですが、SHUREシリコンのMサイズが丁度良ければ、STARチップはM,MLで大丈夫だと思います。
SHUREシリコンのLサイズが丁度良い方は、少し微妙です。STARチップのMLサイズは耳の奥に挿入できるため、基本的にはMLサイズで良いと思います。
ただ、私は普段SHUREシリコンならLサイズを使用しているのですが、左耳はぴったりで、右耳はフィット感に欠けました。なので、STARチップはLサイズを使用しています。もしかすると、人によってはLサイズは大きすぎると感じるかもしれません。
試着できるなら是非試着してフィット感を試してみてください。試着できない場合は、MLとLの2サイズを購入するか、一か八かで、大きめのLサイズを購入するか等、検討してみてください。
形状の違い
SHUREのシリコンは球形、Westoneのシリコンは釣鐘型です。
音の出口についてですが、SHUREのシリコンは小さく、Westoneは出口に向かってラッパ形状に広がっています。
このWestoneの形状を見ただけでも、WestoneのイヤーピースはSHUREのイヤーピースと比べて異なる音を出すことが予想できます。
なお、胴の長いタイプのSTARシリコンチップを使用する場合、結構耳の奥まで入りますので、トリプル(ダブル)フランジ同様、耳たぶを下に引っ張りながら挿入するようにしてください。
外す時も同様に、耳を痛めないようにイヤホンを上下左右に揺すりながら、ゆっくりとはずすようにしてください。
胴が長いタイプのSTARシリコンイヤーチップは、耳の中の接地面が増え、耳の奥まで挿入できることから、SHUREのシリコンや茶楽音人のSpinFitに比べて、遮音性が上がります。
ただし、SHUREのトリプル(ダブル)フランジの方がより耳に深く挿入できるため、一番高い遮音性を誇るのは、トリプル(ダブル)フランジとなります。
Westone「STARシリコンイヤーチップ」の音質について
試聴にあたり、SE215speをSONYのDAP NW-ZX2にSE215speを直差ししました。
試聴曲は、歌謡曲の斉藤由貴 / 卒業(アルバム「AXIA」)、アイドルメタルのBABYMETAL / イジメ、ダメ、ゼッタイ(アルバム「BABYMETAL」)を使用しました。ファイル形式はflacです。
情熱
丸形シリコン
全体的にまろやかで温かみを感じる自然な音色です。
左右の広さは特段広いというわけではありませんが、奥行きを感じます。
バスドラムやベースは重く、はっきりとベースの音階が分かります。キレキレという訳ではありませんが、とても自然な鳴りです。
ボーカルは近めです。
全ての音がはっきりと聴こえますが、各音の主張が強いわけではなく、きちんとこの曲に合ったボーカルにフォーカスが当たっています。
Westone「STARシリコンイヤーチップ」
音色については、若干明るめの音になります。
空間は左右に広がりが増し、若干立体感が出ます。
今、「若干の立体感」と書きましたが、この立体感については、曲の部分ごとに感じ方が違います。曲始まりからサビ前までは、若干の立体感という感じですが、サビに入ると、コーラスが斜め上の奥の方からかなり立体的に聴こえます。
ボーカルはより近くなり、声が生々しく聴こえます。
バスドラム、ベースといった低音は重さはそのままにキレが増します。
歌詞の「決して好きになってはいけない~」から入ってくるスネアドラムのリムショットですが、このリムショットにかかっているエコーまでもはっきりと分かります。
イジメ、ダメ、ゼッタイ
丸形シリコン
曲始まりのピアノはまろやかな音質ながら、アタック感がしっかりと出ています。
バスドラムの重みは今一つですが、キレがあります。
左右で鳴っているギターは重みとキレがあります。
ボーカルは若干前に出てきます。ハードロックのアルバムは、ボーカルが引っ込み気味なものも多いですが、この曲のバランスは絶妙だと思います。
左右の広さは特別広いわけでもなく、立体感もあまり感じません。
Westone「STARシリコンイヤーチップ」
音色は若干明るめになります。
左右の空間が広くなり、立体感があります。
ギター、バスドラム、ベースといった音の重みはそのままに全体的にキレと生々しさが増します。
この曲のハイハットは小さめに鳴っているのですが、それでも良く分かります。
まとめ
SHURE SE846にWestone「STARシリコンイヤーチップ」を装着した場合の特徴をまとめると、以下の通りです。
- 若干音色が明るくなる(スカーっとした感じが増す)
- より立体感が出る
- 音の切れと生々しさが増す
- 解像度(音の鮮明度)が増す
今までSE846を使って、茶楽音人のSpinFit、SHUREのトリプルフランジ、そしてWestoneのSTARシリコンイヤーチップと音質の変化を検証してきましたが、最後にそれぞれのまとめをしておきます。
SHUREの丸形シリコンの音を基本として、低音を減らし、エッジを立て、明るくスカーっとした音にしたい場合はSpinFit、丸形シリコンと同じ落ち着いた音で、音の生々しさ、音の力強さと遮音性を高めたい場合はトリプルフランジ、音を明るくエッジもそこそこ立てたいが、低音の力強さを減らしたくない場合はWestoneのSTARシリコンイヤーチップといった具合です。
個人的には、SHURE SE846に数万円程度のリケーブルをするよりもイヤーピースを変更したほうが、ローコストであるのはもちろんのこと、音質の変化・改善に多大な効果があると思います。
もしSE846の音質に何かしらの不満がある場合は、まずイヤーピースの変更をしてみてください。
リケーブルにお金をかけるのはその後で良いと思います。
★SHURE SE846イヤーピース交換レビュー