こんにちは、まちろです。
昨年末(2021)、松本伊代さんが「トレジャー・ボイス」っていうカバーアルバムをリリースしましたけど、皆さん、聴きました?
松本伊代さんの声は作曲家の筒美京平さんのお気に入り。まさにトレジャーボイス。カバーした曲はみんな個性的な声の持ち主で、それを松本伊代さんが歌う。
「クセ」と「クセ」が混ざり合ってもうオリジナルだよ…
特に郷ひろみさんの「あなたがいたから僕がいた」なんかは本人とは違った独特の哀愁を感じます。
さて、皆さんはカバーソングって聴きますか?
原曲をリアルタイムで聴いていた人にとってはそのイメージが強烈に残ってるので、他人が歌うとちょっと違和感ありますよね。
私は昭和40年代生まれで昭和歌謡ド真ん中世代なんですが、カバーソングもよく聴きます。それは、名曲を歌い継いで欲しいという願いと世代違いの若者が歌うとどんな風景を見せてくれるのだろうっていう期待から。
なので、原曲と同世代の人より若い世代によるカバーが好きです。ただ、例えばジャズ風とか原曲の雰囲気を崩しすぎると大きな違和感があるのでそこはキープして。
今回はそういった原曲の雰囲気を踏襲しつつ、若い世代がカバーした名曲を10曲ほど紹介したいと思います。
【昭和歌謡】おすすめカバーソング10選
1. 東京ららばい / cover by 片岡健太
原曲歌手は中原理恵さん。片岡健太さんはsumikaというバンドのボーカリスト。このカバーは「筒美京平song book」というアルバムに収録されています。
キレがある、瞬時に音が立ち上がる、巧みなファルセット
スパニッシュなイントロから始まる緊張感が彼の歌声のおかげで終始キープされています。
一時期、徳永英明さんのカバーソングが流行りましたよね。インタビューで「カバーソングを歌うにあたって気を付けてることは?」って聞かれた時、徳永さんは「へんに意識をしたり力んだりせずに淡々と歌う」なんて言ってました。
片岡健太さんもそんな印象で、徳永英明さんをもっとパワフルにした感じでしょうか。非常に難しい曲にもかかわらず歌声に余裕があり、曲中で様々な表現をして楽しんでいる様子が浮かんできます。
2. ブルー・ライト・ヨコハマ / cover by 上原多香子
原曲歌手はいしだあゆみさん。上原多香子さんは90年代に活躍したSPEEDのメンバー。
もう随分昔のことですが、私の家にいしだあゆみさんのレコード「ブルー・ライト・ヨコハマ」あって、父の持ってるレコードの中で一番聴きやすかったので時々聴いてました。
これって演歌なのかな…
いしだあゆみさんの独特な歌い方からそんな印象が。いしだあゆみさん曰く、「演歌っぽく歌いなさいって言われて…」そんな指示があったそうです。
上原多香子さんが「ブルー・ライト・ヨコハマ」をカバーするきっかけになったのは、2003年のNHK連ドラ「てるてる家族」に出演したこと。このドラマはいしだあゆみさんの実妹(石田由利子)とその家族をテーマにしたもので、上原多香子さんはいしだあゆみさんの役を演じていました。
いしだあゆみさん自身もこのドラマでかつて歌手を目指したキャバレー歌手という役柄で出演していて、上原多香子さんと一緒に「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌うシーンも。
役柄として「いしだあゆみ」という人、「ブルー・ライト・ヨコハマ」という曲を研究し、かつ、本人との共演で多大なるインスピレーションを受けた上原多香子さんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」は単なるカバーではなく、そういった様々な思いや体験が折り重なって出来たもの。
いしだあゆみさんとは違ったクセのない淡々と歌う様子は、昭和と平成がチラチラと切り替わり、今自分がどの時代にいるのか分からなくなるような浮遊感があります。
3. 赤いスイートピー / cover by 茉奈佳奈
原曲歌手は松田聖子さん。1996年のNHK朝の連ドラ「ふたりっ子」で子役デビューした三倉茉奈さん、三倉佳奈さんのデュオ。
キャッキャ言ってた子役時代が強く脳裏に焼き付いてるので「茉奈佳奈ちゃん」と呼びたくなりますが、もうお二人ともお子さんもいらして。時の経つのは早い…
松田聖子さんの「赤いスイートピー」はたくさんカバーされてますが、その中でも茉奈佳奈という双子のデュオによるカバーはインパクト大。双子だけあって声の調和が絶品で、爽やかな風がスイートピーを揺らしている情景が浮かんできます。
この「ふたりうた」というカバーアルバムはパート3まであって、河合奈保子さんの「けんかをやめて」、杏里さんの「オリビアを聴きながら」なんて曲も入ってるのでぜひ聴いてみてください。
4. 瑠璃色の地球 / cover by 手嶌葵
原曲歌手は松田聖子さん。ジブリ映画「ゲド戦記」の主題歌「テルーの唄」で歌手デビューした手嶌葵さんによるカバー。
身近にある愛情の連鎖で地球を愛で包んでいく
そんな愛の偉大さ、生きる力を感じさせてくれる素晴らし曲ですね。
手嶌葵さんの歌唱は独特。ハスキーな声でぽつりぽつりと歌う。そのせいか言葉の一つ一つが胸に刺さってきます。
手嶌葵さんはこの曲を何度かカバーしていて、それぞれ違った印象を受けます。とりあえず最新版(2022)を聴いてみてください。
あと、もう一つおすすめなのは広瀬すずさんver.。
アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の劇中歌で、その純真無垢な歌声から大人が歌うそれとは全く違う印象。
大人が解決できない地球の問題はこういった若者たちならきっと解決できる
広瀬すずさんの歌声を聴いていると、そんな希望が湧いてきます。
5. くちびるNETWORK / cover by 中川翔子
原曲歌手は岡田有希子さん。マルチタレント 「しょこたん」こと中川翔子さんによるカバー。「しょこたん☆かばー4-1~しょこドル編~」というアルバムに収録されています。
色々なことに造詣と愛が深い「ザ・ヲタ女」。
聖子さま~!!!
そんな雄叫びを何度聞いたことか。それほど松田聖子さんにゾッコンのしょこたんは歌もピカイチで80年代アイドルの特徴もよく分かってらっしゃる。
私がかつてのアイドルソングのカバーを受け入れられるようになったのは、しょこたんのカバーが素晴らしかったから。ユッコと聖子ちゃんをブレンドしたような歌唱の「くちびるNETWORK」は、かつての熱い想いを甦らせてくれます。
2013年にサンミュージックが久々にアイドルを手掛け話題になった「さんみゅー」っていうアイドルグループも岡田有希子さんのカバーをしたりで頑張ってましたけど、残念ながら2020年に解散。それぞれが成長してまた集結できたらいいですね。
6. 異邦人 / cover by 久嶋美さち
原曲歌手は久保田早紀さん。久嶋美さち(きゅうしま みさち)さんは2005年にメジャーデビューし、「異邦人」は3rdシングルとしてリリースされました(アルバム「絹の道」にも収録)。
民謡がベースになっている彼女の歌声は、ダイナミックで異国情緒を感じさせてくれる「異邦人」にピッタリ。時折入る民謡の節回しがオリエンタル感を強めています。
久嶋美さちさんの「異邦人」は久保田早紀さんによるプロデュースでリリースされただけに、久保田早紀さんのエッセンスが多分に注ぎ込まれた熱い仕上がりになっています。
7. 難破船 / cover by 華原朋美
原曲歌手は中森明菜さん。小室ファミリーで超絶人気を誇った朋ちゃんによるカバー。「MEMORIES 2-Kahara All Time Covers-」というアルバムに収録されています。
色々なことがありました。このカバーアルバムを出した後も。
歌の世界にプライベートの自分を重ね合わせるかのような繊細で力強い歌唱は中森明菜さんと重なり、聴いていて両者からは同じ風景が浮かんできます。
二人ともデビューから見てきましたけど、人として真っすぐで純粋というか、裏切るより裏切られた方がいいとか、人として決して忘れてはならない大切なものを持っている気がします。
たぶん今後も波があると思いますけど、歌という自己表現手段はずっと捨てずにいて欲しいと思います。
8. いい日旅立ち / cover by alan
原曲歌手は山口百恵さん。alanさんは中国出身の歌手で、シングル「風に向かう花」(ジャケットC)のカップリングとして収録されています。
百恵さん世代の方はきっとJR東海のCMが頭に浮かんでくるでしょう。
自立がテーマだと思いますが、そういった旅立ちの時の心情というのはポジティブとネガティブのバランスが人によって違いますよね。
百恵さんの歌からは、旅立つ前から人生を達観したような大人びた雰囲気を感じます。
alanさんのバージョンから感じるのは自立に対する不安と悲壮感のようなもの。親に反対されながらも中国から日本に渡り歌手デビューした自分と重ね合わせたような雰囲気が伝わってきて、そういった人生の写し鏡のような歌唱が魅力的です。
その他、映画「桜田門外の変」の主題歌「悲しみに雪は眠る」もおすすめ。
9. リ・ボ・ン / cover by 武藤彩未
原曲歌手は堀ちえみさん。80年代アイドルをこよなく愛する武藤彩未さんによるカバー。アルバム「DNA 1980 Vol.1」(2013年発売)に収録されています。
堀ちえみさんの振付って、
力いっぱい全力で!
そんな感じでしたけど、平成アイドル武藤彩未さんもそんな雰囲気が。かわいらしい声で丁寧に歌う様子から大好きな80年代アイドルソングを歌える喜びが伝わってきます。
昨年(2021年)東京国際フォーラムで「筒美京平の世界」というトリビュートコンサートがありました。そこで武藤彩未さんは薬師丸ひろ子さんの「あなたを・もっと・知りたくて」を歌唱。
アイドル歌手としてデビューした頃とは違う、肩の力を抜いた余裕のある歌声はもうアーティストでした。
「DNA 1980」というアルバムはインディーズレーベルで現在は入手困難ですが、YouTubeとかで聴けるカモ。河合奈保子さんの「スマイル・フォ・ーミー」、松田聖子さんの「青い珊瑚礁」などもカバーしてるので、ぜひ聴いてみてください。
最新アルバム「SHOWER」ではシティポップ風の楽曲を歌っているので、そちらも是非!
10. 真夜中のドア / cover by 今井優子
原曲歌手は松原みきさん。1987年「哀しみのペイヴメント」で歌手デビューした今井優子さんによるカバー。アルバム「SWEETEST VOICE」に収録されています。
「真夜中のドア」は、海外でのシティポップの火付け役となった楽曲だけに世界中でカバーされ愛されている楽曲。もちろん国内でもたくさんのアーティストがカバーしていますが、今井優子さんの原曲に対するリスペクト度合いはハンパなく、松原みきさんの死を悼むファンの方々もきっとすんなり受け入れることの出来るカバーだと思います。
終わりに
まだまだ紹介したいカバーソングはありますが、今回はこの辺にしておきます。
クリス松村さんのブログで、海外ではシティポップだけでなく80年代アイドルのレコードにも注目が集まっているという話がありました。
名曲がカバーされ続けると時代が変わっても誰かの目に留まってブームになり、さらには原曲歌手の再評価にもつながる。
そういったループが永遠に続いていって欲しいと願っています。