2016年、iPhoneからイヤホンジャックが廃止されたことを機にワイヤレス(Bluetooth)イヤホン(以下、ワイヤレスイヤホン)のニーズが徐々に高まり、現在では有線イヤホンを抜く注目度の高いジャンルとなっています。
そのため、あらゆるメーカーから短いスパンで多くのワイヤレスイヤホンがリリースされ、どれを選んだら良いのか困ってしまうぐらいワイヤレスイヤホンは市場に溢れかえっています。
現在、ワイヤレスイヤホン市場において、TWS(トゥルーワイヤレスステレオ)とも表記される全くコードのない完全独立型のイヤホンに高い注目が集まっています。
中でもAppleの「AirPods Pro MWP22J/A」やSONYの「WF-1000XM3」が何かと話題になっていますが、この記事では、今後のトレンドや充電池の寿命・Bluetooth等のバージョンアップによる規格変更といったワイヤレスイヤホンの寿命等を鑑みて、2019年11月現在のコストパフォーマンスの高い製品をおすすめとして紹介していきます。
併せてワイヤレスイヤホンの種類・特徴についても簡単に記載しておきますので、ワイヤレスイヤホン選びの参考になれば幸いです。
ワイヤレスイヤホンの特徴
ワイヤレスイヤホンとは、Bluetoothという伝送方式を使い、コードレスで音楽を楽しむことのできるイヤホンのこと。
スマホは、iPhone・アンドロイドの区別なく使用することが出来ます。
ワイヤレスイヤホンは、コードの煩わしさから解放されるので非常に快適ですが、その一方、ワイヤレスであるが故のデメリットもあります。
充電式であるが故の手間、場所によっては音が(一方、又は両方)途切れる、自分の持っているスマホやDAPに繋がりにくい(相性の良し悪し)、音の遅延が発生する、同価格帯の有線イヤホンと比べると音質的に不利…etc
特に音の遅延に関しては、ゲームや動画視聴を頻繁にする方は注意が必要です。
ただ、こういった機能的な部分に関しては年々改良され、日常使うに当たって不満のないレベルになってきています。
音質に関しては値段に比例し、同価格帯の有線イヤホンと比べると音の繋がりや滑らかさ、空間表現といた部分において劣る感じは否めません。有線イヤホンとの音質差は、高価格帯になる程顕著になってくるので、その点、留意してください。
ワイヤレスイヤホンは、Bluetoothを使ってデータのやり取りをしますが、その際の音声圧縮変換方式をコーデックと言います。
コーデックは、SBC・AAC・aptX・aptX HD・aptX LL・LDACといった様々な種類があります。
コーデックの内、aptX HDやLDACにまで対応していると、ワイヤレスでありながらハイレゾクオリティの音声再生をすることが出来ます。
ただ、スマホやDAP側がその高音質コーデックに対応していないと意味がないので、この点にも注意してください。
ワイヤレスイヤホンは、コーデック以上にイヤホン自体の性能が音質を大きく左右するので、コーデックばかりに気を取られず、イヤホン自体の性能にも着目してみてください。
ワイヤレスイヤホンは大きく分けると、左右のイヤホンがコードで繋がっている左右一体型・ネックバンド型と、全くコードのない完全独立型(左右分離型)があります。
左右のイヤホンがコードで繋がっているタイプ
ワイヤレスイヤホンのスタンダードなタイプで、価格は数千円のものから数万円と幅が広く、ほとんどのモデルに、マイクやオーディオコントロール機能が付いています。
イヤホンには、マグネットが付いており、耳から外した後、胸元辺りでイヤホンをくっつけておくことが出来ます。
このタイプには、左右一体型とネックバンド型があります。
左右一体型
左右一体型は、左右のイヤホンを単純にコードで繋ぎ、その一方、もしくは両方にコントローラー、電源ユニットが付いています。
イヤホンの取り回しが良い反面、コントローラー等のユニットがコード半ばについているため、製品によっては、そのユニットの重さや走っていたりするとブラブラすることから、イヤホンが耳のベストポジションからずれやすいというデメリットがあります。
ネックバンド型
ネックバンド型は、首に掛る部分が太めの作りになっており、この部分にコントローラーや電源ユニットが内蔵されています。
そのため、左右一体型に比べてイヤホンの装着感は安定するので、ジョギングなどの使用に向いていると言えます。
その反面、首に軽量の輪っかをかけている感じになるので、人によっては首周辺に違和感を感じるかもしれません。
完全独立型
全くコードのないイヤホン本体のみのタイプで、一番ワイヤレスイヤホンの快適さを感じることの出来る機種です。
このタイプには、箱型の充電機能付き収納ケースが付属しており、イヤホンを使い終わった後に収納すると、自動的に充電できる仕組みになっています。
ケースをフル充電して置けば、2~3回分の充電はできるので、1回の稼働時間が比較的短い完全独立型ワイヤレスイヤホンの欠点を補完しています。
その反面、高額だったり、製品によっては片方だけ音が途切れる、フィット感が良くないと耳からポロっと外れて落としてしまうといった完全独立型独特のデメリットもあります。
タイプ別おすすめワイヤレスイヤホン
価格と性能のバランス面からおすすめ機種を各タイプ別に3機種程度挙げておきます。
ワイヤレスイヤホンの商品入れ替えサイクルが早く、購入を迷っていると廃番になってしまい、入手出来ないといったこともよくあります。
特に完全独立型は人気が高いため、気になる商品があったらネットの口コミのみで判断せず、出来る限り試聴・試着して早めに入手することをおすすめします。
以下に紹介するイヤホンには、価格.com(2019年11月6日現在)の最安値を参考値として記載しておきます。
左右一体型
JBL T110 BT
カラーは、ブラック、ホワイト、グレー、ブルー、ピンク、グリーンと豊富で、最安値は2,872円です。
(おすすめポイント)
- 安価だがJBLという老舗オーディオメーカーの製品である安心感
- 音切れしにくい
- 音ズレが少ない
- 値段相応の音質を確保している
- 1回の充電で6時間の再生が可能
音ズレ、音の遅延といったワイヤレスイヤホン特有の煩わしさが、非常に少ないのは大きなポイントです。
音質は、基本的に若干低音強めの聴きやすい音質だと思いますが、中にはドンシャリだとか、音がこもる、低音が出ないという人もいます。
この差は、使用するプレイヤー、各々が聴く曲、音源のビットレートなど様々な要因が考えられますが、一番大きいのは使用するイヤーピースとフィット感による個人差だと思います。
フィット感が甘いと高音部がきつく聴こえ、低音が出ないと感じるので、その場合はワンサイズ大きめのイヤーピースを使用するか、自分の耳に合いそうな他社のイヤーピースを使用してみてください。
コードが長すぎると感じる方もいるようですが、これは体格によっても個人差があり、コードが長いことによってリモコン部の操作がしやすいと感じる方もいます。
イヤホンのコードの形状はきしめん型(平べったい形)で、タッチノイズが出やすい反面、コードの強度と絡みにくいといったメリットもあります。
音質は価格なりですが、それほど音質に拘らず、ワイヤレスイヤホンとはどのぐらい使い勝手の良いものなのかを知る初めての製品としては、基本性能をきっちり抑えた「JBL T110 BT」が一番のおすすめです。
なお、同価格帯では、再生時間が15時間とロングバッテリーが特徴のSONY WI-C200(最安値4,053円)という製品もありますが、この辺りは価格と音質の好みで選んで良いと思います。
JVC HA-FX87BN
カラーはブラックとゴールドの2色で、最安値は5,366円です。
(おすすめポイント)
- 5000円台という低価格ながらノイズキャンセリング機能搭載
- ロック等にマッチする力強いサウンド
ノイズキャンセルの効果やドンシャリ気味の音質などは価格なりですが、この価格でノイズキャンセル機能が付いている機種はなかなか見当たりません。
高いコストパフォーマンスとスタイリッシュなデザインを求める方におすすめです。
SHURE SE215 SPE+BT-A2
SHURE SE215の低音強化版SHURE SE215 SPEのワイヤレス版で、カラーは、ホワイトとブルーの2種類、最安値は17,974円です。
「SHURE SE215+BT-A2」(ノーマルバージョン)の最安値は、17,818円です。
SHURE SEシリーズのワイヤレス製品は2017年に発売されましたが、2019年9月にマイナーチェンジし、BTユニットが高音質化されました。
(おすすめポイント)
- 1回の充電で10時間の再生
- コーデックはSBC,AAC,aptX,aptX HD aptX LLに対応
- 他のMMCX端子のイヤホンを接続し無線化できる
- 音ズレが少ない
- 音が途切れにくい
- SHUREという保証体制が整っているメーカーの製品であり2年間の保証が付く
SHUREのイヤホンは各種ありますが、それぞれ出来が良く、短い期間でモデルチェンジせずに商品を定番化させています。
既存の有線タイプであるSE215,SE215 Special Editionは、SHUREのケーブル脱着式イヤホンのエントリーモデルで、発売から既に7年は経過していますが、現在でも人気のあるロングセラーイヤホンです。
ワイヤレスモデルをリリースするに当たって、全く新しいイヤホンを投入するのではなく、既存の人気のあるモデルをワイヤレス化するところは、SHUREらしい定番イヤホンに対する自信の表れだと思います。
イヤーピースは通常のシリコンのみならずのみならず、遮音性の高いフォームイヤーピースも同梱しおり、こういった充実した付属品もSHUREならではです。
価格に関しては有線のSE215レベルの音質を考えると少し高いと感じますが、高音質BTユニットを他のMMCXイヤホンでも使用したいという方にはイチオシです。
ネックバンド型
SONY WI-1000X
カラーはブラックとシャンパンゴールドの2色で、ブラックの最安値は24,839円です。
(おすすめポイント)
- AIフルオートノイズキャンセリング機能
- ほぼすべてのコーデックに対応し、LDACやDSEE HXによってハイレゾ相当の高音質再生ができる
- NFC対応機器で簡単に接続できる
- ノイズキャンセリング使用時で10時間、不使用時で14時間の長時間再生
- 音切れしにくい
- ネックバンド部が軽量で、首周辺の違和感が少ない
- イヤホンはBAとダイナミックのハイブリッド構造
このイヤホンに関しては、現時点でのワイヤレスイヤホンの完成形といえる出来で、外出時に高音質でストレスフリーに音楽を楽しむための機能が全て入っています。
イヤホン部は、BA(バランスドアーマチュア)とダイナミック振動版のハイブリッド構造となっており、クリアで伸びやかな高音と、豊かな低音を楽しむことが出来ます。
ネックバンド式の為、かさばるという面はありますが、正直、特に欠点という欠点は見当たりません。
ノイズキャンセリングについて触れて少し触れておきます。
ノイズキャンセリングの効果について、購入した人の評価が分かれていますが、これは、どの程度の遮音効果を期待するか、イヤーピースがどの程度フィットしているかによります。
ノイズキャンセリング機能が付いていても、耳栓のような完全無音にはなりませんが、いずれにせよ、騒音下でも高音質に音楽を十分に楽しむことが出来るレベルの遮音効果はあります。
この機種は2017年に発売されたもので、2019年12月には「WI-1000XM2」という新機種に切り替わります。
「WI-1000X」は現在においても高い完成度を保った製品なので、値崩れしている今が買い時です。気になったら在庫が無くなる前にゲットしてください。
SONY WI-C600N
2019年モデルのネックバンド型で、カラーはブラック、グレー、ブルーの3色です。
最安値は、15,790円です。
(おすすめポイント)
- AIノイズキャンセリング機能
- NFCでワンタッチ接続
- AAC,aptXコーデック対応
- 高音域を補完するDSEE等のSONYならではの高音質機能
- 量感がありながらクリアで見晴らしの良い音質
上位機種のノイズキャンセリング機能や音質面を落とした機種ですが、イヤホンを付けたまま外音を取り込むモードも付いており、普段使いには十分な機能を備えています。
上記で紹介した1000Xよりもネックバンド部が柔らかく、取り回しは良好です。
ただ、キャリングポーチが付属していない点に注意してください。
RHA MA650 Wireless
カラーはシルバー1色で、最安値は、9,050円です。
(おすすめポイント)
- 1回の充電で12時間の再生
- 保証期間が3年
- アルミハウジングでキレのある音質
- ネックバンド部がしなやかでコンパクトに収納できる
- IPX4防滴防汗仕様
- NFC対応機器で簡単に接続できる
1万円ちょっとで、保証期間や連続再生時間も長く、aptXコーデックにも対応しているので、コストパフォーマンスに優れたモデルと言えます。
音質は若干硬めの音&フラットバランスのため、聴くジャンルによっては合う合わないがあるかもしれません。できるだけ試聴してその音質を確かめてみてください。
完全独立型
以下に紹介する3機種は、いずれもSBCに加えてAAC・aptX対応、Bluetoothの接続安定性も高い製品です。
AVIOT TE-D01d
カラーはブラック・ダークルージュ(ワインレッド)・ネイビー(ブルー)の3色です。
最安値は9,900円ですが、ポイント還元を含めると9,000円を切るぐらいの価格になっています。
(おすすめポイント)
- 9時間の連続再生に加え、チャージングケースとの併用で100時間以上の再生ができる
- クリアで若干低音多めのキレのある力強い音質
この機種の最大の特徴は、チャージングケース(イヤホンケース)に約1,800mAhの大容量バッテリーを積んでいること。
Bluetoothイヤホンとしての完成度の高さもさることながら、モバイルバッテリーとして使用することのできるチャージングケースは大きな魅力です。
価格も1万円を切っており、正直なところ欠点らしい欠点が見当たらないイチオシの機種です。
なお、AVIOTのイヤホンは01a,01bなど似たような名称の機種が存在するため、購入の際は注意してください。
2019年12月21日に、AVIOT TE-D01dの進化版「AVIOT TE-D01d mk2」が発売される予定です。
再生時間11時間(ケース併用で120時間)、耳から落ちにくい新設計等。
【追記】2020.6.1
完全ワイヤレスイヤホン AVIOT TE-D01gが、2020年6月1日~7月31日の期間限定で、通常価格9,768円(税込)を7,980円(税込)のキャンペーン価格で販売
AVIOT TE-BD21f
カラーは、ブラック、シルバー、バイオレットの3色です。
最安値は、15,501円です。
(おすすめポイント)
- バランスドアーマチュア×2+ダイナミックドライバー×1を積んだハイブリッド型イヤホンで、非常に高い解像度とクリアでフラットバランスの音質
- 7時間の連続再生(ケースとの併用で最大25時間)
再びAVIOTのイヤホンですが、この機種はより音質に拘った機種と言えます。
バランスドアーマチュアによる繊細でしっかりと芯の通った中高音、ダインミックドライバーによるドッシリと腰の据わった低音を再現しながらも、そのチューニングはいわゆるドンシャリタイプではなく、オーディオライクなフラットバランスに仕上げてあるので、より音質に拘る方におすすめです。
欠点という程ではありませんが、本体が筒状になっているため、装着した時に耳から飛び出た感じになります。
Noble Audio FALCON NOB-FALCON
カラーはブラックのみです。最安値は、18,480円。
(おすすめポイント)
- 10時間の連続再生(ケースとの併用で最大40時間)
- クリアで解像度の高い美音
- 人間工学に基づいた絶妙な装着感
Noble Audioは、20万円を超えるようなカスタムIEM(インイヤーモニター)を手掛けているメーカーで、このFALCONにはそのノウハウが凝縮されています。
音質は力強さで勝負するタイプではなく、クリスタルのような美音。
見た目はカスタムイヤホンのごとく耳型を取ったような形状で、自然に耳の奥に入り込む作りになっています。
こういったノズルの長めのタイプのイヤホンを使ったことがない方は少し慣れが必要かもしれませんが、この形状が耳の痛みや負担を軽減する役割を果たしています。
まとめ
近年のリスニングスタイルはより快適な方向に向かっており、イヤホンはワイヤレス、音源はストリーミングで聴くというのがトレンドです。
Amazon Music HD、SONYのmora qualitasといったハイレゾ音質を歌ったストリーミングサービスも出現したことから、今後のワイヤレスイヤホン市場はより高音質化を目指していくように思います。
ワイヤレスイヤホンの新製品が出るサイクルは非常に速いので、欲しいと思った時が買い時です。
まだ一度も使ったことがないのであれば、コスパの良い機種を選んでワイヤレスならではの快適さを体験してみてください。