【井上鑑】昭和歌謡に魔法をかけた音の魔術師|寺尾聰から中森明菜まで、あの名曲が今も古びない理由

昭和歌謡/J-POP
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こんにちは、音楽大好き!昭和生まれのまちろです。

昭和の歌謡界は華やかでしたね。歌番組もたくさんあって、セットにもお金を掛けられた時代。それに出演する歌手たちも音楽性やキャラクターも独特。

ヒデキかっこいい~、聖子ちゃんかわいい~、世良公則&ツイストしびれる~!

そんな感じで、歌手と曲に夢中で、それを誰が作ってるかなんて気にもしませんでした。まあ、あの有名なアーティストが楽曲提供!なんて話題になった時は、ちょっとは作詞作曲者を意識したこともありましたけど、編曲者(アレンジャー)なんて全く…。

ただ、唯一「この音は誰が作っているんだろう?」とアレンジというものに意識が向いたことがあります。それは井上鑑さん。昭和歌謡界には船山基紀さんや萩田光雄さんのように圧倒的な作品数を誇る巨匠もいますが、井上鑑さんのサウンドには彼らとは違う「独特の趣き」がありました。それは、単なるヒット曲作りにとどまらない、クリエイターとしての強烈なこだわりから生まれたもの。

今回は、そんな井上鑑さんが編曲した楽曲の中から個人的に大好きな曲を紹介しながら、その魅力に迫りたいと思います。

 

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【井上鑑】独自の編曲スタイルとその特徴

「プロ意識が足りない?」井上鑑さんの驚きの制作スタイル

井上さんは自身の仕事について「自分はプロ意識が足りない」と語ることがあります。これは謙遜ではなく、彼の独自のスタンスを表しています。

通常、プロのアレンジャーは「どうすればヒットするか」を最優先に考え、自分の趣味趣向は抑えてトレンドの音を取り入れますが、井上さんの場合はちょっと違っていて、「こんな音を入れたら面白い」「こんな風にしたら自分がかっこいいと思う」といった自身の趣味嗜好が大なり小なり入っています。

その結果、聴けばすぐに「あ、これは井上鑑さんの仕事だ!」と分かるようなオリジナリティ溢れるサウンドに。

周囲からは「君の音楽は複雑すぎる」「マーケットを意識しろ」と言われることもあったそうですが、業界の常識を破るその手法こそが、多くのリスナーを虜にしていきました。

 

天才を育てた「師匠・大滝詠一」と「変態的」な探究心

井上鑑さんの音楽性を語る上で、大滝詠一さんの存在は欠かせません。 もともとクラシックやジャズ、チック・コリアやプログレを好んで聴いていた井上鑑さんは、当初ポップスには興味がありませんでした。しかし、大滝さんからアメリカン・ポップスの魅力を教え込まれ、その幅を大きく広げることになります。

お二人は「これほど馬が合う人間がいたのか」というほど意気投合し、録音手法や機材の知識を共有しながら、その後、数々の名作を生み出していきました。

 

思わず耳を奪われる「井上鑑サウンド」3つの魔法

井上鑑さんのアレンジには、一度聴いたら耳から離れない「心地よい違和感」があります。その秘密は主に3つのポイントに集約されます。

  1.  ツッコミ気味のリズム
    井上鑑さんのリズムは、いわゆる前ノリ。ビートのジャストな位置より若干速く出てくる感覚。100m走のフライングスタートみたいな感じ。スタートのピストルが鳴るのを待ってる時って気が早ってドキドキしますよね。井上鑑さんが手がけた曲には、そんなドキドキ感があります。
  2. 「心地よい違和感」のあるコード進行と転調
    耳慣れた単純な和音ではなく、メジャー7th、sus4、add9といった音を絶妙に足すことで、都会的で洗練された響きを作り出します。また、激しく転調を繰り返しながら、いつの間にかスムーズに元のキーに戻っているという魔法のような構成も特徴です。当時、スタンダードなフォークソングのコード進行に慣れた人には、この「引っかかり」がたまらなくオシャレに感じ、衝撃だったことでしょう。
  3. 徹底的に作り込まれたオブリガード
    歌のフレーズの隙間に入る、短い楽器のメロディ(オブリガード)にも並々ならぬこだわりがあります。この一瞬のフレーズが楽曲のインパクトを劇的に高め、曲全体の完成度を底上げしているのです。

 

 

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【井上鑑】歴史に残る珠玉の名曲を紹介

1. 寺尾聰「HABANA EXPRESS」

アルバム『Reflections』の1曲目。当時、寺尾聰さんは「ルビーの指環」など3曲を同時にベストテン入りさせるという史上初の快挙を成し遂げていました。 それまでドラマなどでコミカルな役も演じていた寺尾さんを、「超クールでかっこいい大人のアーティスト」へと変貌させたのが、井上鑑さんのアレンジでした。このアルバムは「一家に一枚」と言われるほど普及し、井上鑑さんに「自分のやり方でも売れるんだ!」という大きな自信を与えました。

 

2. 泰葉「フライデイ・チャイナタウン」

今や世界中のシティポップ・ファンを魅了するこの曲も井上鑑さんの仕事です。 昭和歌謡特有の「ドロっとした重さ」がなく、どこかサラッとしていて都会的。「ドラマの主人公のような、おしゃれにデフォルメされた世界観」が、今聴いても全く古さを感じさせません。

 

3. 山本達彦「LAST GOOD-BYE」

映画『凶弾』の主題歌。山本達彦さんのクールなルックスと甘い声を引き立てる、最高にスタイリッシュなアレンジが施されています。井上鑑サウンドの入門編としても非常に分かりやすい一曲です。

 

4. 浅野ゆう子「ストップ・ザ・カンバセーション」

俳優としてのイメージが強い浅野さんですが、この曲では井上さんのアレンジによって都会的なシンガーとしての一面が際立っています。

 

5.いしだあゆみ「赤いギヤマン」

「ブルー・ライト・ヨコハマ」に代表される演歌寄りの歌謡曲イメージを一気にシティポップへと塗り替えた衝撃的な一曲。アーティストの新たな魅力を引き出す、井上鑑さんのプロデュース能力の高さが伺えます。

 

6.郷ひろみ「哀愁ヒーロー(パート1・パート2)

曲の途中でガラリと雰囲気が変わる「パート2」を挿入した意欲作。 当時のテレビ番組では「パート2」がカットされることもありましたが、井上鑑さんは「楽曲をよりドラマチックに展開させたい」という情熱を持っていました。郷ひろみさん自身も楽曲へのこだわりが強く、安易なカットやランク付けを嫌うアーティストだったため、この攻めたアレンジが実現したのかもしれません。

 

7.THE ALFEE「あなたの歌が聞こえる」

アルバム「FOR YOUR LOVE」に収録されているアコースティックギターの和音の響きが驚くほど美しい一曲です。 ここで使われているのが、のちに坂崎幸之助さんから「変態井上チューニング」と呼ばれることになった、井上鑑さん考案の特殊なオープンチューニング。この美しい一瞬の響きを出すためだけに、コンサートでもギターを持ち替えさせるほどのこだわりようでした。

 

8.中森明菜「SAND BEIGE -砂漠へ-」

中森明菜さんのシングル曲。Aメロで鈴の音が左から右へとパンしていく演出があるんですが、その音の移動感・立体感が凄まじいので、ぜひヘッドホンで聴いてみてください。また、歌謡曲では異例なほどドラムのキックパターンが複雑で、これらの仕掛けが「砂漠」という情景を鮮明に描き出しています。

 

9.薬師丸ひろ子「探偵物語(ストリングス・バージョン)」

薬師丸ひろ子さんの「探偵物語」はシングル曲ですが、このストリングス・バージョンは初のオリジナルアルバム「古今集」に収録されています。井上鑑さんが「師匠」と仰ぐ大滝詠一さんから受けた影響が色濃く出たバージョンです。 大滝さんから学んだアメリカン・ポップスのエッセンスと、井上さんの得意とする流麗なストリングスが見事に融合しています。

 

 

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まとめ:今こそ聴き直したい、色褪せない「鑑サウンド」

井上鑑さんは、単なるヒット曲の影武者ではなく、自身の信念を貫く「純粋なクリエイター」です。2000年代以降も福山雅治さんや本田美奈子.さんらと深く関わり、その才能を現代にアップデートし続けています。 昭和から平成、そして令和へ。私たちの耳を心地よく刺激し続ける井上鑑さんの魔法。
今回紹介した曲の中で聴いたことのない曲があったら、是非聴いてみてください。きっと「あ、ここがフライングスタートだ!」「この鈴の音、本当に砂漠が見える……」と、新しい発見があるはず!

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