SONYウォークマンの変遷と高音質について思うこと

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1979年7月1日にSONYから初代カセットウォークマン「TPS-L2」が発売されたことから、7月1日は「ウォークマンの日」と呼ばれるそうです。

私は2代目カセットウォークマン「WM2」を購入し、おしゃれでコンパクトなボディと、華奢でオレンジのイヤーパッドがついた付属のヘッドホンから放たれるステレオ再生に驚き、毎日ワクワクして音楽を楽しんでいました。

それ以来、SONYファンになり、ポータブルプレイヤーのほとんどはSONYの製品を購入しています。

現在手元に残っているウォークマンは数機種ですが、これまでウォークマンと共に生活してきた中で、その都度ウォークマンに対して思っていたこと、今のDAPについて思うこと、そして今後のウォークマンに期待することなどを書いてみたいと思います。

今回は、どちらかというと主観的要素の強い記事になっていますので、話半分で読んでいただけると幸いです。

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ウォークマンよ、常に時代の先駆者であれ

ポータブルプレイヤーの変遷と私の購入した製品

カセットウォークマンは一定の周期で壊れることが多かったので、「WM2」の後、オートリバース、録音可、ラジオチューナー付きの「WM-F202」、イヤホンのコードの部分にリモコンが付いた「WM-703C」と買い替えて行きました。

MDが登場した頃、私は結構早めにMDに切り替えました。

カセットよりコンパクト、CDのように曲飛ばしが出来る、MDに取り込んだ後に曲の削除・カット等の編集が出来るというところに大きな魅力を感じました。

MDに関しては、カセットのように蓋をパカッと開けるやつより、ビデオデッキのようなフロントローディングの他社製品が気に入ったので、他社製品を購入しました。

その後、パソコンが一気に普及し、音源をデジタルファイル化するMP3という概念が登場しました。

この時に購入したのは、MP3ファイルをCD-Rに書き込むことのできるSONYのディスクマン。

MDも便利でしたが、CDから録音しなければならず、早くて倍速ダビング程度の時間がかかったのに対し、パソコンを使ってMP3ファイルをCD-Rに書き込むスピードは年々上がり、もはや録音するという概念がなくなってしまいました。

ただ、取り込める曲数は、CD1枚分しかなかったため、複数のCDを持ち歩くことに不便を感じていたところ、次に登場したのがMP3プレイヤーでした。

現在では、DAP(デジタル・オーディオ・プレイヤー)と呼ばれることが多いと思います。

MP3プレイヤーが製品化される前、幕張メッセのオーディオショーに行きましたが、そこで確かパナソニックだったと思いますが、チロルチョコレートぐらいの大きさのMP3プレイヤーが展示してあり、その小さな本体に数百曲取り込むことが出来るという説明を聞いて驚きました。

MP3プレイヤーが製品化され始めた頃、フラッシュメモリータイプとハードディスクタイプがありましたが、私が初めて購入したのは、容量の関係からハードディスクタイプの東芝「GIGA BEAT」。

「GIGA BEAT」は、カセットウォークマン「WM2」程度の大きさと重量はありましたが、それよりは少し薄型でした。

その後、やはり小型軽量のMP3プレイヤーに惹かれ、SONYの「A-608」というスティック型のウォークマンを購入し、香水瓶とも呼ばれるそのデザインは十分所有欲を満たしてくれました。

ここまでは、SONYの製品は、よりコンパクトで高音質というスタンスを保っていましたが、アップルからipodが発売された頃から少し様子が変わってきました。

ipodは、ウォークマンよりコンパクトでカラーバリエーションも豊富、そしてよりおしゃれなデザインといった雰囲気で、あっという間に大人気になり、ポータブルプレイヤーと言えばウォークマンというこれまでの図式を覆し、いつしかアップル vs SONYという構図が出来上がりました。

他の家電メーカーもDAPを発売していましたが、この間に消えて行きました。

アップルはユーザーの使い勝手を重視し、SONYは音質重視という感じでDAP市場の棲み分けを図っていましたが、DAPというものに更なる高音質を求める人よりも、ユーザーの痒い所に手が届くスタンスのipodの方が人気を集めるようになりました。

この辺りからSONYの迷走が始まり、Sシリーズ、Aシリーズといった音質差によるバリエーションを設けたりしましたが、アカ抜けないデザインや中途半端な大きさ、高音質と謳っていても、一般の人にどのぐらい音質差があるのか分かりづらいような音質差だったりで、ipod touchが発売された頃には、DAPの人気はさらにアップルへ傾いて行きました。

次に出てきたライバルは、アイリバーのAK(Astell & kern)のDAP。

それまで、HIFIMANのようなウォークマンよりも高額なDAPや、COWONのようなイコライザーを駆使して高音質を謳うDAPがありましたが、アイリバーからリリースされたAK100は、ウォークマンのフラッグシップ機と同価格帯で、素の音質の良さをアピールしてきたことから、ウォークマンの牙城を本気で崩すべくリリースされた製品でした。

ウォークマンは高音質を謳っていながら、中途半端な仕様でユーザーが不満を持っていたところに現れたAK100は、SDカードによる容量拡張、光デジタル出力、音楽再生に特化した仕様等で、これに魅力を感じた一定の音質マニアはAKに流れて行きました。

こうしてライトなユーザーはipod、マニアはAKといった構図の中、SONYはipod touchのようなスマホライクなインターフェイスにAKで取り入れられているFLACというトレンドのファイル形式を読むことの出来るウォークマンを発売しました。

FLACの「F」を冠にしたSONYのアンドロイド搭載機「F800」シリーズは、ipodとAKの良いとこ取りのように思えますが、使い勝手も音質もやはり中途半端で、他社との差はさらに開いていった印象でした。

ipodやAKと比べてサポートはSONYの方が安心という理由でウォークマンを購入するといった方もいたと思いますが、この頃のSONYは、技術者が強いのか、単に社内的にサポートに対する関心が低かったのか分かりませんが、不具合についてサポートに連絡を取ると、ろくに検証もせずに「それは製品仕様です」と答えたりすることが多々あり、私も含め、ネット上でもSONYに対する批判が多く見受けられました。

DAPに関しては、容量不足解消目的で、NW-S739に買い換えましたが、SHUREの高価格帯イヤホンE4Cを購入したことや、SONY初のフルデジタルアンプS-MASTER搭載機NW-X1000シリーズを試聴したことをきっかけに高音質志向になり、その後、イヤホンやDAPは常にフラッグシップモデル(最上位製品)を購入するようになりました。

当初のDAPのフラッグシップモデルは、高くても5万円程度でしたが、AKが10万円を超えるようなDAPを発売するようになってからは、どんどんDAPの価格は上がっていき、現在では50万円越えのDAPも存在します。

カセットウォークマン時代から、モデルチェンジを繰り返すごとに本体は薄型でコンパクトになって行きましたが、AKなどの海外DAPとの音質競争をするようになってから、SONYの高価格帯DAPも大型で重量のあるものになっていきました。

高音質とは何なのか

ここ数年、高音質を謳う様々な言葉を目にします。

ハイレゾ、バランス接続、SHM-CD、Blu-spec CD、ハイレゾCD、DSD、MQA、LDAC…
音楽をスマホと100均イヤホン、もしくはエントリーDAPと数千円のイヤホンで聴かれている方は、これらにどんなイメージを持っているのでしょうか?

私も色々試してきましたが、個人的に感じたことをいくつか書いておきます。

音源について

SHM-CDなどの○○CDというのは、元の音源をどうこうするのではなく、単にCDという円盤のコーティング材等のハード部分の技術の違いであって、これにより正確で安定した記録が出来るというものです。

高級再生機を持っていたり、細かい差異を聴き分けることのできる方は別として、これによる音質の違いは、なかなか感じ難く、違いを感じるとしたら、それは音源のリマスターによる部分が大きいです。

リマスターも音圧を上げて音を力強くしたり、すっきりとクリアにしたりと様々ですが、高音質なCDを購入したいと思った時は、SHMとかBlu-specとか、そういう部分は気にせず、どんなリマスターが施されているかに注目されると良いと思います。

ハイレゾ音源に関しては、「ハイレゾは物凄く音質が良くて感動した!もうCDには戻れない」という人もいれば、「人の可聴範囲を超えた音を記録したって、どうせ聴こえないんだから意味ないでしょ?」「聴いてみたけど、あんまり違いが分からない」という人もいます。

ハイレゾは大雑把に言うと、どこまで広い範囲の音を聴くことが出来るのかといった聴覚検査のようなことではなく、CD以上の情報量を持つことによって、デジタル化によってギザギザになった波形を原音の滑らかな波形に近づけることにより、より原音に近い柔らかで自然な音を聴くことができ、原音の持つ自然な音の消え際といった音の空気感を感じることが出来るようになることを言います。

マスター音源の録音状態が良く、ハイレゾ用に丁寧にリマスターされたハイレゾ音源は、リアルで自然な音調と、音場がどこまでも立体的に広がって行く感覚を味わうことが出来ますが、リマスターせず単にハイレゾ化しただけ、もしくはCD音源をマスターとして技術的にアップコンバートしたようなものに関しては、CDとの音質差が分かりづらいものもあります。

ハイレゾ音源は試聴することが出来ますが、試聴段階ではAACなどの圧縮音源になります。
それゆえ、試聴だとハイレゾの空気感までは正確に伝わらないと思いますが、リマスターの具合などはよく分かります。

年々CD自体の音も高音質になってきているため、ハイレゾ音源に関しては、通常の音源とどう違うのか聴き比べ、大きな違いを感じた時のみ購入されると良いと思います。

DAPについて

最近DAPに搭載されることが多くなってきたバランス接続(端子)ですが、これは大雑把に言うと、音のセパレーション(左右の音の分離)が良くなることにより、解像度(音の鮮明度合)や分解能(音の分離具合)が向上し、立体的で広い音場の中で、より細かい音が鮮明に聴こえるようになります。

よって、状態の良いハイレゾ音源をDAPのバランス接続で聴くと、音のシャワーを浴びるようなリスニング環境を得ることが出来ます。

高額なDAPになるにつれ、こういった部分がより鮮明になったり、デジタル音源であることを感じさせない滑らかな音調になって行きます。

これは、DAP内部に高音質化パーツを採用することのみならず、本体自体にアルミ、銅といった高音質化に適した素材を使用することに起因するもので、これがDAPで言う高音質と呼ばれる部分です。

ただ、バランス接続や高価格帯DAPの音が、万人にとって「いい音」「ずっと聴いていたい音」なのかというと、必ずしもそうとは言い切れない気がします。

高価格帯DAPは重量が重く、シャツのポケット等に入れることが困難なため、常にバッグやウエストポーチに入れて使用し、それだと音量調整・曲送り等がやりづらいので、別途Bluetoothのリモコンを使用する方も多いようですが、初期のDAPは、このリモコンよりも小さいものが多くありました。

バランス接続は、確かに空間はクリアで、細かい音までも鮮明に聴こえますが、人によっては音が分離しすぎて「音楽がバラバラに聴こえて不自然、一体感に欠ける」とか、本来ならそんなに主張するはずもない音が耳に飛び込んでくるので「音の主役が分かりづらい」とか、体調によっては「聴き疲れする」といった印象を持つこともあると思います。

私も様々なDAPやイヤホンを聴いてきましたが、これらの新製品リリースのサイクルも早いことから、個人的には、毎日使うDAPは、価格と使いやすさ、音質のバランスの取れたものをチョイスし、最高音質はDAPに求めるのではなく、据え置きシステムに担ってもらうのが一番いいのかなと思っています。

DAPに高音質を望むなら、高額なDAPを買い替えていくよりも、そういった音質の部分はポータブルアンプに任せた方が、同程度のクオリティをより安価で手に入れることも可能です。

ウォークマンに望むこと

これまでDAPウォークマンをずっと見てきましたが、音質は徐々に向上していると思います。

ただ、ソフト面に関しては、使いやすかった部分が無くなったりと、進化と退化を今でも交互に繰り返しています。

音楽転送ソフトは時々変更されますが、これも同様で、未だにパソコンに大きな負荷をかけたり、不具合があったりで、ユーザーの批判対象になっています。

かつてのSONYウォークマンは、常に時代の先端を走っていましたが、徐々に他社の後追いのような感じになって来て、現在ではウォークマンのどのラインナップの製品にも対抗しうるような他社製品が続々と発売されてきています。

スマホの音質も向上し、イヤホン次第では音楽専用機の必要性を感じさせない音質になってきています。

こういう状況下で、ウォークマンは何を目指してどこへ向かって行くのでしょう?

私は想像も付きませんが、とにかく特定のユーザーのみならず、ライトなユーザーから高音質志向のヘビーユーザーまでの声をきちんと聴くことから始めて欲しいと思います。

現在、レコードやカセットテープといったアナログがブームになっていますが、面倒くさいし嵩張るし、ノイズもあるこういったアナログに魅力を感じるのは何故なのか?

ウォークマンがウォークマンらしくあるためには、こういった音楽の楽しみ方の多様性に何かヒントがあるのではないかと思います。

まとめ

色々書きましたが、基本的にはウォークマンの動作の安定感、文字化けしたりせず日本語の読み方順に並ぶアーティスト等の一覧など、やはり使いやすさと安心感という点で、数あるDAPの中で、私はウォークマンが一番好きです。

音楽の楽しみ方は、音質を究極まで追求するのみならず…

音楽を愛する人の心を真に揺さぶるようなウォークマンを期待して、この記事を終わりにしたいと思います。

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