数年前から色々なアーティストの過去の作品が続々とハイレゾ化されていますが、中にはCDとの音質差が分かりづらいものもあります。
今回は、ALFEE(アルフィー)のアルバム「THE RENAISSANCE」(ザ・ルネッサンス)のハイレゾと初期のCDの収録曲を1曲ずつ聴き比べ、体感した音質差について書いてみます。
結論から言うと結構な差があり、曲によってはリレコディングしたぐらいそのクオリティは上がっています。
THE ALFEE ハイレゾ音源レビュー~THE RENAISSANCE~
THE RENAISSANCEの仕様
今回ハイレゾ音源と比較するCDは、1989年に発売された「純金蒸着 GOLD CD」。
CDの盤面はキンピカですが、当時発売されていた通常のCDから特別リマスターされている訳ではありません。
ハイレゾは、「Remastered at Abbey Road Studios」と銘打たれており、イギリスのAbbey Road Studiosで、96kHz/24bitのハイレゾクオリティでリマスターされています。
ハイレゾ版のこの仕様は、2014年に発売された「THE ALFEE 40th Anniversary スペシャルボックス」に収められているCDと同じですが、CDという器を取り払うことにより、本来のハイレゾクオリティを体感することが出来ます。
さて、この「THE RENAISSANCE」というアルバムですが、個人的にはALFEEのアルバムの中で次回作の「FOR YOUR LOVE」と並んで大好きなアルバムです。
上質な哀愁漂うキャッチーなメロディーに、ツーバスを大胆に取り入れたプログレやハードロック的アレンジ、3人がボーカルを取ることによる大きな曲の雰囲気の変化、攻撃的なコーラスによる音の厚み等々、歌謡曲やジャパニーズメタルといったカテゴリーに収まらない、ALFEEという独特のジャンルと言っても過言でないと思います。
ただ、気がかりだったのは、アルバム全体を通してリバーブ(エコー)が強くかかっているため、カッコいいドラムのリズムパターンやギターリフがモコモコっとしてぼやけて聴こえることでした。
ハイレゾの解像度(音の鮮明度合い)と共に、この辺りを中心にどのような変化がみられるのか注目して聴いてみました。
「THE RENAISSANCE」の音質比較
音質比較に際して、パソコンにSONY ポータブルアンプ PHA-2を接続し、ヘッドホンはSONYのモニターヘッドホン MDR-Z1000を使用しました。
パソコンの再生ソフトはSONY MEDIA GO(AISO)、CDのファイル形式はFLACです。
1.孤独の美学
風の吹く音から曲が始まりますが、CDは単に風が吹いてるな~という印象しかなかったのに対し、ハイレゾで聴くこの風の音は木枯らしから吹雪になったかのような重厚感があります。
風の音終わりからストリングスの荘厳なイントロが始まりますが、ハイレゾはこの弦楽器的な音の低音部分がブンブンと重く深みのある音を鳴らしています。
激しいドラムのフィルから本格的に曲がスタートしますが、ハイレゾはバスドラムのキックが重く、仮にその前のストリングスの部分でハイレゾとCDとの違いがイマイチ分からなかったとしても、この部分でハッキリと違いを認識できると思います。
ロータムも重く、かつ、どこまでも沈み込んでいくような深い低音を聴かせてくれます。間奏前の「ラーララララー」という部分のツーバスのキックや間奏に入る直前のドラムフィルの部分でそれを感じることが出来ると思います。
エレキギターのバッキングは、ハイレゾは分厚く、その音像(音の面積)はCDの1.5倍増しぐらいに感じます。
音の質感は、ハイレゾは非常になめらかで温かみのある音であるのに対して、CDはクリアではありますが、冷たいというか若干カサついた感じに聴こえます。
2.愛の鼓動
「燃える瞳は まるで太陽の様に」の歌と共にドラムが入ってくる部分で、ハイレゾは右で鳴っているハイハットの音がクッキリと聴こえます。
ドラムに関しては、ハイレゾはロータムの重さが際立って聴こえます。
3.真夜中を突っ走れ!
ベースの8分音符のあとに入ってくるエレキギターのバッキングですが、ハイレゾはCDよりも分厚く、かつギターを弾いた時のニュアンスが生々しく聴こえます。
ボーカルが始まってからバックで鳴っているシンセサイザーの音は、ハイレゾではどのような動きをしているのかがよく分かります。
ハイレゾで聴くギターソロは立体的で、これも非常に生々しく聴こえます。
この曲ではロータムを多用していますが、前の2曲と比べると、ハイレゾの方がCDよりも特別に重いとまでは感じませんでした。
4.二人のSEASON
この曲で一番ハイレゾとCDとの違いを感じるのは、エレキギターの音。
曲始まりのエレキギターのリフですが、リフが始まった瞬間、ハイレゾは「グギュッ」といった、まるでスタジオのギターアンプの前でギターの音を聴いているような生々しさがあります。
この曲は流れるようなキャッチーなギターソロがありますが、ハイレゾはキュンキュンしたマーシャルアンプ特有の音をリアルに感じられ、スタジオのミキサーにヘッドホンを刺して聴いているような感覚になりました。
ただ、確認したわけではないので、この曲でマーシャルを使用していたかは不明ですが、私がバンドをやっていた時のスタジオに置いてあったマーシャルアンプの音と同じに聴こえました。
5.星空のディスタンス
この曲のハイレゾは、エレキギターのバッキングは分厚く、ギターソロは生々しくCDよりも一歩前に出てくる印象です。
あと、ハイレゾ特有の音の滑らかさと音場の立体感を感じることが出来ましたが、それ以外は、特にドラムが特別重いとかCDより特別解像度が高いとかは感じませんでした。
6.GATE OF HEAVEN
ハイレゾでは、エレキギターの音が分厚く聴こえます。
曲の最初の方の「君の声が こだまする」辺りのバックで鳴っているシンセサイザーの4分音符の各小節の最初の音は、ハイレゾはCDよりも重みがあります。
「心を引き裂く」の後に入ってくるシンバルの逆再生のような音は、CDは耳に刺さるような鋭さがあるのに対し、ハイレゾは耳に刺さらない程度のまろやかな音質になっています。
解像度、ドラムの重さ等には大きな違いは感じませんでした。
7.鋼鉄の巨人
ドラムから始まるこの曲は、すぐに違いを感じることが出来ました。
ハイレゾでは、この最初のドラムが自然な音色で、重さと低音が沈み込むような深みを感じます。
ドラムの音は非常に生々しく、目の前で叩いているドラムを聴いているかのような錯覚に陥るほど。
ギターも同様に生々しく、そのピッキングニュアンスがハッキリと分かります。
ハイレゾではギターやボーカルは厚みを増して聴こえるのに対し、CDの音は薄っぺらく感じます。
8.NOBODY KNOWS ME
1~7曲目に感じた音の重さやギターの厚み等は、ハイレゾとCDでそれ程大きな違いは感じませんでしたが、一番違いを感じたのは音の分離の良さ。
CDはボーカルと左右ステレオに振られた音が適度に混ざっているのに対し、ハイレゾは左右のバッキングとセンターのボーカルがハッキリと分かれ、それぞれの音が非常に聴きやすいです。
9.STARSHIP ~光を求めて~
曲始まりのピアノは、CDが硬めの音でアタック音が少々きつめに出ているのに対し、ハイレゾは自然な音色で、その余韻まで分かります。
ここで入ってくるコーラスボーカルは、ハイレゾでは大き目の音像で、CDよりも一歩前に出てきます。
この後、バーン!とバンドの音が出てきますが、ハイレゾではCDとは全く別物といった印象を受けるほど、ドッシリとした音になっています。
バスドラムは重く、左右ステレオに振られたエレキギターは厚みを帯び、空間上部には同じく厚みを持ったシンセサイザーが鳴り響いています。
音色も自然で、エッジ(音の輪郭)を強調しない滑らかなさを感じます。
10.永遠の詩
ドラムの入っていない静かで荘厳な短いエンディング曲ですが、その分、ハイレゾとCDでは空間の違いを感じます。
CDでは耳から顎の辺りで音が鳴っているのに対し、ハイレゾは顎の少し下から頭のてっぺんぐらいまでの上下の広さと、CDよりも深い奥行きを感じます。
解像度、音の重さ等の違いはあまり感じませんでした。
まとめ
「THE RENAISSANCE」のハイレゾをまとめると以下の通り。
- CDよりも空間が広く、立体的である
- 音のエッジを強調しない、なめらかな音
- 各音の音像が大きく、CDよりも広い空間をびっしりと埋め尽くしている
- 左右で鳴っている音と中央で鳴っている音の分離がしっかりしている
- エレキギターの音が、その弾き方のニュアンスが分かる程、生々しい
- 曲にもよるが、ドラムのスネア、バスドラム、ロータムの音が重々しい
今回の聴き比べにおいて、「THE RENAISSANCE」のハイレゾと初期のCDとでは、ハッキリと分かる違いがありました。
これは、ハイレゾであると同時にイギリスのAbbey Road Studiosでのリマスタリングが功を奏しているように思われます。
他の記事でもいくつかハイレゾとCDのレビューをしてきましたが、「THE RENAISSANCE」に関しては、絶賛に値すると思います。
THE ALFEEファンでハイレゾ環境が整っている方は是非購入して、その鮮度の高さを味わってみてください。