1985年、自身の誕生日である6月23日にデビューした南野陽子さん。「ナンノ」の相性で親しまれ、歌手としてだけでなく、テレビ、映画等、幅広い分野で活躍した80年代のトップアイドルでした。
南野陽子さんの曲を振り返った時、思い浮かぶのはどの曲でしょうか?
「楽園のDoor」「話しかけたかった」「吐息でネット」「秋からも、そばにいて」などそれぞれお好きな曲があるかと思います。
今回は、南野陽子さんの曲は好きだけど、未だアルバムまでは手を付けてないという方に向けて、アイドル時代にリリースされたオリジナルアルバム全10作品の中からおすすめのアルバムを3枚ピックアップしてみました。
南野陽子さんのアルバムに触れるきっかけになれば幸いです。
南野陽子 おすすめアルバム
南野陽子のアルバムの特徴
人気のあった80年代アイドルの殆どはアルバムをリリースしていますが、特に南野陽子さんのアルバムは、どのアルバムを聴いてもハズレがないと言っても過言でない程、高いクオリティのアルバムが揃っています。
大抵、女性アイドルのアルバムは、初期の数枚はかわいらしい雰囲気で、それ以降は路線を変更したり、大人っぽい雰囲気のアルバムになったりで、自分が好きだった頃のキラキラした感じがなくなってきます。
先程、南野陽子さんのアルバムにはハズレがないと言ったのは、歌い方も変わらず、こういった初期のキラキラした雰囲気がどのアルバムにも感じられ、さわやかなポップ、悲し気に疾走する曲、バラードとバランスよく収録されているからです。
そして、どのアルバムにもシングルカットしてもおかしくないようなキャッチーでインパクトのある曲が収録されているのもその理由の一つです。
そういうことから、南野陽子さんに関してはベストアルバム等でアルバム曲をかいつまんで聴くというスタイルよりも、アルバム1枚1枚聴いていくことをおすすめします。
では、南野陽子さんのおすすめアルバム3枚を紹介していきたいと思います。
4thアルバム「GARLAND」(1987年)
(収録曲)
- 雪の花片(はな)
- 昼休の憂欝
- メルヘン・ロード
- 神様がいない月
- 八重歯のサンタクロース
- 夕ぐれのロマンス達
- カナリア
- 真夜中のメッセージ
- 白夜のひまわり
- 恋人達のクリスマス
- ひとつ前の赤い糸
このアルバムは、クラシカルなピアノのアルペジオから始まるマイナー調(悲し気な曲調)の美しい旋律を持つバラード「雪の花片」という曲から始まります。
通常、アイドルのアルバムは、さわやかなポップソングで幕を開けるものが多く、南野陽子さんのアルバムも通常はそうなっています。
アルバムの1曲目というのは、アルバム全体の雰囲気や評価を決めてしまうぐらい重要な曲ですが、1曲目にこういった悲愴感のある曲を持ってくるコンセプトにこのアルバムの特異性を感じます。
この曲以外にも「神様がいない月」など、マイナー調の美しいメロディーを持つ曲が収録されていると共に、「楽園のDoor」に似た曲調の「白夜のひまわり」、「秋のindication」の歌詞とアレンジを変更した「カナリヤ」など、聴きどころの多いアルバムとなっています。
「秋からも、そばにいて」のような曲調が好きな方は、このアルバムは特におすすめです。
6thアルバム「SNOWFLAKES」(1988年)
(収録曲)
- 七つのスノーフレイク
- 12月、風の糸で
- 彼女の銀のブーツ
- メリー・クリスマス
- 臆病なトナカイ
- Happy New-Yearが言いたくて
- リフトの下で逢いましょう
- 氷のダイヤモンド
「SNOWFLAKES(スノーフレイク)」とは、雪が花びらのように舞い散る、その一片一片のこと。
このアルバムは、クリスマスをモチーフにしたコンセプトアルバムで、それぞれの曲に夢・希望・涙・幸福・悲しみ・淋しさ・愛という意味を持つスノーフレイクを降らせた物語仕立てのアルバムになっています。
このアルバムの1曲目は、オープニング的な意味合いの曲で、南野陽子さんは歌っておらず、クリスマスムード漂うゆったりとしたインスト+英詩を歌う男性の歌声で幕を開けます。
ちなみに、この男性のクレジットは「UNCLE SNOW」となっていますが、正体は編曲家の萩田光雄さんです。
2曲目から、先ほどの意味を持ったスノーフレイクが舞い落ちてゆきます。
このアルバムは、サラッと聴き流されてしまうようなものではなく、何かをしながら聴いていても、ふと手が止まってしまうような、クリスマスといった日における様々な人間模様が描かれています。
ポイントとなるのは、4曲目の「メリー・クリスマス」という優しいバラードで、恋人同士の「愛」ではなく「人間愛」を歌った曲。
この曲を聴いていただきたくて、このアルバムをおすすめアルバムに入れました。
もちろんクリスマスが楽しくなるような爽快な曲も入っています。
「氷のダイヤモンド」という非常に美しいメロディーを持ったマイナー調のバラードで、アルバムは幕を閉じます。
7thアルバム「GAUCHE」(1989年)
このアルバムは「ゴーシュ」と読みます。不器用、未熟といった意味のようです。
このアルバムが製作されたのは、ちょうどマスコミからバッシングを受けていた時期で、芸能界やマスコミに対する不安、様々な決意といった素の南野陽子さんの心情が感じ取れるようなアルバムになっています。
(収録曲)
- マニキュアがかわく間に
- それは夏の午後
- 鏡の中のエトランゼ
- トラブル・メーカー
- 月夜のくしゃみ
- サマー・フレグランス
- 月見草幻想
- 知ってると思ってたさよならGirl
- 涙の数、大人になれたら
- 愛してる
- 思いのままに
このアルバムも他のアルバム同様、バラエティーに富んだアルバムとなっていますが、おすすめポイントの1つは、そのサウンド面。
曲調等は他のアルバムと同じような感じではありますが、アレンジ面において、スパッスパッと曲に切れがあるため、ノリの良い曲はよりノリよく聴こえます。
もともと南野陽子さんの歌唱は音の立ち上がりが良く、切れと伸びがあるので、その相乗効果で、「それは夏の午後」など、アルバム全体を通して、単純に聴いていて気持ちの良いサウンドとなっています。
2つ目のおすすめポイントは、印象的な曲が多く収録されていること。
5曲目の「月夜のくしゃみ」はバラードですが、必ずと言っていいほど収録されているバラードの中でも、心に染み入る度合いの強い曲です。
日常生活において、楽しいこと、辛いこと、どちらもあると思いますが、どちらかというと辛いこと、苦しいことの方が多いのではないでしょうか?
この「月夜のくしゃみ」という曲は、そういった状況の中でも、自分を信じて明日を迎えようという意味合いのある曲で、傷ついた心にそっと寄り添い、勇気づけてくれるような優しい曲です。
7曲目の「月見草幻想」は、南野陽子さんのセリフから始まる不思議な雰囲気を持つマイナー調の曲で、このアルバムにインパクトを与える大きな役割を担っています。
10曲目の「愛してる」は、「悲しみのモニュメント」と「楽園のDoor」を混ぜたようなマイナー調の曲で、シングルカットしてもおかしくない仕上がりになっています。
まとめ
南野陽子さんのアルバムが煌めいているのは、南野陽子さんの多くのアルバムに携わった編曲家 萩田光雄さんの功績も大きいと思います。
4000曲近く編曲を手掛けた萩田光雄さんですが、その中でも南野陽子さんとの仕事が一番楽しくアイデンティティを感じるとさえ言われています。
「ヒット曲の料理人」という萩田光雄さんについて書かれた本には、南野陽子さんとのアルバム制作秘話などが書かれているので、機会があったら是非読んでみてください。