SHUREのイヤホンを購入したら、他社のイヤーピースを物色する前に是非試して欲しいのがSHURE純正イヤーピースであるトリプルフランジイヤーピースです。
SHUREのイヤホンの特徴として、遮音性の高さが挙げられますが、私は付属しているフォームイヤーピースよりも、トリプルフランジイヤーピースの方が遮音性は高く感じます。
高い遮音性とはどの程度のものなのか、体感してみてください。
トリプルフランジイヤーピースの特徴
トリプルフランジイヤーピースとは
大中小のきのこが重なって見えることから、三段きのことも呼ばれる、シリコン素材のイヤーピースです。
昔からSHUREのBA(バランスド・アーマチュア)には付属しているイヤーピースですが、ダイナミック型であるSE112,SE215,SE215spe等には付属していません。
トリプルフランジイヤーピースは、エティモティックリサーチではメインのイヤーピースとなっています。
トリプルフランジイヤーピースの使い方
装着方法
通常の丸形シリコンのように耳に装着しようとしても、このトリプルフランジイヤーピースははまりません。
耳たぶを下に引っ張りながらゆっくりと耳の奥へ挿入します。
調整のやり方
もし、痛みを感じるようなら、一番先端の小さい傘の部分をハサミでカットし、ダブルフランジにするか、イヤホンに装着する側の茎を適度な長さにカットするかで調整してください。
私はこのトリプルフランジイヤーピースを色々なやり方でカットし、試してみましたが、ダブルフランジが一番しっくりきました。
耳に装着し、ベストなポジションになったにもかかわらず、イヤホン本体が耳から飛び出すようなら、茎の部分を1ミリ単位でカットしてみてください。
茎をカットするに当たって、目分量ではなく、きちんと定規等で図ってカットした方が良いです。適当にカットすると、左右を揃えようとだんだん短くなってきてしまいます。
耳からの外し方
耳から外す時は、イヤホンを上下左右にゆすりながら、ゆっくりと抜くようにしてください。
力づくで一気に引っこ抜くと、耳の中が真空状態になっているため、大きな耳鳴りがし、耳を傷めます。
トリプルフランジイヤーピースの利点
トリプルフランジイヤーピースの最大の利点は、遮音性の高さと耐久性の高さを両立している点です。
この遮音性は、コンプライと同等、もしくはそれ以上です。物理的に耳に栓をする形になるので、電子制御によるノイズキャンセルよりも遮音性は高いです。
遮音性はコンプライと同等でありながら、シリコン素材でできている為、コンプライとは比べ物にならないぐらいの耐久性があります。
コンプライの耐久性は1~2か月程度ですが、トリプルフランジイヤーピースはイヤーピースが劣化してイヤホンノズルからスポッと抜けてしまう状態になるまで使用でき、その耐久期間は、最低でも1年はあります。
コンプライでトリプルフランジイヤーピースと同等の高さがあるPシリーズは、耳の中で先端がつぶれ、高域がマスクされるケースがありますが、トリプルフランジイヤーピースは、そもそも先端がつぶれるような仕様になっていないため、このような心配はありません。
トリプルフランジイヤーピースの音質
さて、気になる音質ですが、通常の丸形イヤーピース(Lサイズ)とトリプルフランジイヤーピースで、同じ曲を聴き比べて、その違いを検証したいと思います。
なお、トリプルフランジは傘の一番上をカットしてダブルフランジにしたものを使用しました。
検証にあたって、DAPはSONY NW-ZX2を使用し、SE215speにを直差ししました。
試聴曲は、斉藤由貴「卒業」(アルバム「AXIA」)、Galneryus 「The Time Has Come」(アルバム「Phoenix Rising」)を使用しました。
卒業
丸形シリコン
音色は暗めです。
空間は、左右は広いのですが、上下、奥行きは余り感じません。
バスドラム、ベースは重く、その圧力を感じます。低音の芯に筋肉がついているといったイメージです。
これらの低音のエッジは立っていませんが、ボワついてはおらず、ベースラインも分かります。
左右で鳴っているパーカッションの音は良く聴こえます。
シンバル等の高音域については、少し引っ込んで聴こえます。シャリ付きは感じませんが、乾いたカサカサとした感じの音です。
アコースティックギターは自然な厚みがあり、弦のスティール感が分かります。
ボーカルは、少し「サシスセソ」が気になります。刺さる訳ではないのですが、耳にフッと息を吹き込まれるかのような感じがします。
中高域の音色は無機質で艶や音の余韻は感じられません。
ボーカルとベース・バスドラムといった中音・低音の音がフォーカスされた音量バランスです。
トリプルフランジ
音色は丸形シリコンと同じで暗めではありますが、全体的に音の厚みが増し、音のエッジが削り取られ、非常に滑らかな音を奏でます。
ボーカルに関しては、SHUREのBAか?と思ってしまう程、生々しくなります。
音の輪郭が若干甘くなりますが、ベースラインが不明瞭になるほどではありません。
上下左右奥行といった空間が広めになります。特に音の立体感が顕著です。
曲始まりから15秒ぐらいまでの間に、定位中央で鳴っている深くエコーのかかったパーカッションのピヤーという感じの音は、トリプルフランジが一番よく聴こえます。
遮音性が一番高いので、鳴っているすべての音が非常に分かり易いです。
音のバランスは、丸形シリコンと同様で、ボーカルが一番前にでて、それをどっしりとした低音が支えるといった感じです。ハイハット等の高音は、少し引っ込み気味です。
The Time Has Come
丸形シリコン
ハイハット等の高域の音が引っ込み気味で、金属感を伴わない、カサついた感じです。
バスドラムは重く、音圧感がありながら、キックの連打がはっきりと分かります。
ボーカルは引っ込んではいませんが、少々厚みが足りません。
左右ステレオで出ているギターのバッキングは、重みと厚みがあり、ザクザク感がとても気持ちがいいです。
空間は、左右は広いですが、上下奥行きは感じません。
全体的に艶のない無機質な音質です。
トリプルフランジ
丸形シリコンの欠点を補完したした音と言えます。無機質に聴こえた部分は艶やかになり、若干輪郭が甘いながらもバスドラムはさらに重く、ツーバスの連打は胸に響くような迫力があります。
空間も「卒業」同様立体感を増し、ボーカルも引っ込んではいません。
高音については、やはり他の音域と比べると引っ込み気味です。
まとめ
トリプルフランジは丸形シリコンイヤーピースの質を底上げした音質と言えます。
基本的な音色は変わりませんが、艶と力強さ、解像度や空間表現がアップします。
特にボーカルの生々しさは特筆すべき点で、SHUREのBAを思わせるような滑らかな音になります。
一方、以前に紹介した茶楽音人のSpinFitは、本来のSHUREの音とは全く別物になる印象で、明るい音質と切れ、適度な解像度・音圧といった感じです。
個人的な感想としては、音質改善という目的において、トリプルフランジと茶楽音人のSpinFitはどちらもありだと思います。
音の迫力とボーカルの生々しさが欲しい方はトリプルフランジ、音の明るさと切れ、適度な音圧が欲しい方は茶楽音人のSpinFitという風に選択すればよいと思います。
ただ、最初でもお話しした通り、トリプルフランジイヤーピースの遮音性はものすごいです。
図書館、喫茶店等で周りの音に全く邪魔されず、完全なる静寂の中で、自分の世界に浸りたい方は、是非一度トリプルフランジイヤーピースを試してみてください。
★SHURE SE215 speイヤーピース変更レビュー