SHURE SE846を購入すると付属してくるトリプルフランジイヤーピース。
その特殊な形状から使ったことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このイヤーピースを使用するとフォームイヤーピースと同等、またはそれ以上の遮音性を発揮し、音質もかなり変化します。
今回は、SE846にトリプルフランジを付けた場合、どのような音質変化があるのか、その装着方法と共に書いてみたいと思います。
トリプルフランジ イヤーピースの特徴
トリプルフランジイヤーピースとは
大中小のきのこが重なって見えることから、三段きのことも呼ばれる、シリコン素材のイヤーピースです。
昔からSHUREのBA(バランスド・アーマチュア)には付属しているイヤーピースですが、ダイナミック型であるSE112,SE215,SE215spe等には付属していません。
トリプルフランジイヤーピースは、エティモティックリサーチではメインのイヤーピースとなっています。
トリプルフランジイヤーピースの使い方
装着方法
通常の丸形シリコンのように耳に装着しようとしても、このトリプルフランジイヤーピースははまりません。
耳たぶを下に引っ張りながらゆっくりと耳の奥へ挿入します。
調整のやり方
もし、痛みを感じるようなら、一番先端の小さい傘の部分をハサミでカットし、ダブルフランジにするか、イヤホンに装着する側の茎を適度な長さにカットするかで調整してください。
私はこのトリプルフランジイヤーピースを色々なやり方でカットし、試してみましたが、個人的にはダブルフランジが一番しっくりきました。
耳に装着し、ベストなポジションになったにもかかわらず、イヤホン本体が耳から飛び出すようなら、茎の部分を1ミリ単位でカットしてみてください。
茎をカットするに当たって、目分量ではなく、きちんと定規等で図ってカットした方が良いです。適当にカットすると、左右を揃えようとだんだん短くなってきてしまいます。
耳からの外し方
耳から外す時は、イヤホンを上下左右にゆすりながら、ゆっくりと抜くようにしてください。
力づくで一気に引っこ抜くと、耳の中が真空状態になっているため、大きな耳鳴りがし、耳を傷めます。
トリプルフランジイヤーピースの利点
トリプルフランジイヤーピースの最大の利点は、遮音性の高さと耐久性の高さを両立している点です。
この遮音性は、コンプライと同等、もしくはそれ以上です。物理的に耳に栓をする形になるので、電子制御によるノイズキャンセルよりも遮音性は高いです。
遮音性はコンプライと同等でありながら、シリコン素材でできている為、コンプライとは比べ物にならないぐらいの耐久性があります。
コンプライの耐久性は1~2か月程度ですが、トリプルフランジイヤーピースはイヤーピースが劣化してイヤホンノズルからスポッと抜けてしまう状態になるまで使用でき、その耐久期間は、最低でも1年はあります。
コンプライでトリプルフランジイヤーピースと同等の高さがあるPシリーズは、耳の中で先端がつぶれ、高域がマスクされるケースがありますが、トリプルフランジイヤーピースは、そもそも先端がつぶれるような仕様になっていないため、このような心配はありません。
SE846+トリプルフランジの音質チェック
さて、気になる音質ですが、通常のシリコン(丸形)イヤーピース(Lサイズ)とトリプルフランジイヤーピースで、同じ曲を聴き比べて、その違いを検証したいと思います。
なお、トリプルフランジは傘の一番上をカットしてダブルフランジにしたものを使用しました。
DAPはSONY NW-ZX2を使用し、SE846に直差ししました。
試聴曲は、斉藤由貴「情熱」(アルバム「ガラスの鼓動」)と、BABYMETAL「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(アルバム「BABYMETAL」)を使用しました。
情熱
丸形シリコン
全体的にまろやかで温かみを感じる自然な音色です。
左右の広さは特段広いというわけではありませんが、前方に奥行きを感じます。
バスドラムやベースは重く、はっきりとベースの音階が分かります。キレキレという訳ではありませんが、とても自然な鳴りです。
ボーカルは近めです。
全ての音がはっきりと聴こえますが、各音の主張が強いわけではなく、ボーカルにフォーカスが当たっています。
トリプルフランジ
音色については、ほぼ同じで、空間はより左右に広がります。
特筆すべきは前方への立体感で、音が出た瞬間から耳を起点として逆八の字に前方へ空間が広がり、頭が音の空間に包まれるような感覚になります。
低音の質感はあまり変わりませんが、若干丸形シリコンより強めに出ます。
より鼓膜に近い位置で音が鳴るせいか、細かい音がよりはっきりと聴こえます。
空間が広がったことにより、音の分離も良くなり、各音が聴きやすくなりました。
イジメ、ダメ、ゼッタイ
丸形シリコン
曲始まりのピアノはまろやかな音質ながら、アタック感がしっかりと出ています。
バスドラムの重みは今一つですが、切れがあります。
左右で鳴っているギターは重みと切れがあります。
ボーカルは若干前に出てきます。ハードロックのアルバムは、ボーカルが引っ込み気味なものも多いですが、この曲のバランスは絶妙だと思います。
これ以上ボーカルが前に出るとポップス的なバランスになりそうだし、逆に楽器音がこれ以上前に出ると、SU-METALの声が聴きとりづらく不満が出ます(^^♪
左右の空間は特別広いわけでもなく、立体感もそれ程感じません。
トリプルフランジ
音色は変わりませんが、音が出た瞬間から「情熱」同様、空間に奥行きがあり、音場により立体感が出ます。
バスドラム・ギターともに、若干トリプルフランジの方が重みを増します。
音の分離も良くなったように聴こえます。この曲は、あまり多くの音が鳴っているわけではありませんが、空間が広くなったおかげで、各音が重ならず、聴き取りやすくなりました。
そのせいもあり、MOAMETAL&YUIMETALのコーラスが若干ですが、聴き取りやすくなりました。
まとめ
以前、SHURE SE215speでも同様のチェックをしてみましたが、それと共通する点は、音色は変わらず、音にダイレクト感が増したこと、空間が立体的になったことです。
違うと感じた点は、ハイハットやシンバルといった高音域が引っ込まないこと、低音の量は若干増えますが、SE215speよりも増えないこと、SE215speでは低音の切れが若干後退したのに対し、SE846では切れは変わらないといった点です。
このように同じイヤーピースでも使用するイヤホンや曲によって変化が生じます。いくつか持っていると、気分に合わせて音色を変化させることができるので良いと思います。
特にこのトリプルフランジは、すべてがシリコン素材でできているので、硬い部分がなく、素材による痛みは全く感じません。
そして、遮音性がものすごく高いので、自分の世界に浸りたいときのは最適です。音楽を流すと本当に周囲の音が全く聴こえなくなるため、電話や家族が帰宅しても全く分かりませんのでご注意を。
★SHURE SE846イヤーピース交換レビュー