今回は、ポプコン(ヤマハ・ポピュラーソング・コンテスト)出身で1978年にデビューした下成佐登子さんのベストCD「下成佐登子 シングルズ & ワークス」の紹介をしたいと思います。
その艶やかで伸びのある声は、同じポプコン出身の八神純子さんを彷彿させます。
80年代の歌手で言えば、本田美奈子さんでしょうか…
このベストCD「下成佐登子 シングルズ & ワークス」には、1986年にフジテレビで放送された田中美佐子さん主演の「愛の嵐」の主題歌や、アニメ「小公女セーラ」の主題歌等も収録された全41曲の大ボリュームです。
まずは、デビュー曲の「秋の一日」やセカンドシングルの「雨」を聴いてみて、その歌声と楽曲に魅了されたなら、このベストCDやオリジナルアルバム等も是非聴いてみてください。
【下成佐登子】 ベストアルバムレビュー~シングルズ & ワークス~
収録曲
「下成佐登子 シングルズ & ワークス」は2枚組のCDとなっており、Disc 1はビクターイヤーシングルAB面の全曲、Disc 2は、他の作詞作曲家が手掛けたドラマ等の楽曲が収録されています。
Disc 1のシングルとは、ビクターイヤーシングル全曲となっているので、若干抜けているシングル曲もあるかもしれません。
Disc 1
- 秋の一日(シングル・バージョン)
- 船出
- 雨
- 今はただ
- 悲しみのアクトレス
- 夢物語
- 金色のエアプレーン
- もどらない季節
- ためいきアベニュー
- 片想い
- 星になりたい(松竹映画「シュンマオ物語 タオタオ」主題歌)
- 雪解け(松竹映画「シュンマオ物語 タオタオ」主題歌)
- 恋のエピローグ
- 風を感じて
- いつわりの愛
- 遥かなる祈り
- セプテンバー・メモリー
- Lie la Lie
- やさしい雨(日本テレビ系「ウォッチング・日本列島」主題歌)
- NEVER MIND
奇数曲はA面、偶数曲はB面(カップリング)となっています。
Disc 2
- 花のささやき(フジTV系アニメ「小公女セーラ」主題歌)
- ひまわり(フジTV系アニメ「小公女セーラ」主題歌)
- お父さまへのララバイ(フジTV系アニメ「愛の若草物語」エンディング・テーマ)
- お元気ミーちゃん(NHK みんなのうた)
- いない いない ばあ
- 赤い帽子(NHK みんなのうた)
- ポーッ
- ひみつのアッコちゃん(フジTV系アニメ「ひみつのアッコちゃん」主題歌)
- 夕焼け日誌(MBSTBS系アニメ「三丁目の夕日」オリジナル・サウンドトラックより)
- Mercy(日本テレビ系アニメ「赤い光弾ジリオン」より)
- 未来の記憶(日本テレビ系アニメ「赤い光弾ジリオン」より)
- Stay the way you are(日本テレビ系アニメ「赤い光弾ジリオン」より)
- Mrs.Melancholy(東海TV・フジTV系 連続ドラマ「愛の嵐」主題歌)
- 紙の船
- Wood Walker(NHKアニメ「ロビンフッドの大冒険」主題歌)
- 星空のラビリンス(NHKアニメ「ロビンフッドの大冒険」主題歌)
- TRANSFORMER(日本テレビ系アニメ「戦え超ロボット生命体トランスフォーマー」主題歌)
- We will be one someday(国際科学技術博覧会 政府出典アニメーション「アレイの鏡」主題歌)
- 碧い湖(国際科学技術博覧会 政府出典アニメーション「アレイの鏡」挿入歌)
- いつか星の海で(テレビ朝日系アニメ「勇者王ガオガイガー」エンディング・テーマ)
- Save My Love(劇場版「はじまりの冒険者たち」挿入歌)
CDの音質
試聴には、パソコンにSONYのポータブルアンプPHA-2をつなぎ、SONYのモニターヘッドホン MDR-Z1000を使用しました。
CDには、特にリマスター等の記載はありません。
聴いた感じも特段マスターをいじった雰囲気は感じられませんが、解像度(音の鮮明度合)も良好で、ボーカルとオケのバランスに変な癖もなく聴きやすい音質です。
曲の印象
まず、Disc 1ですが、多くの曲はマイナー調(悲し気な曲調)かメジャー調(明るい曲調)のバラードで、アップテンポの曲は数曲程度です。
Disc 2は、バラエティーに富んでおり、色々な表情の下成佐登子さんを聴くことが出来ます。
2枚のCDを合わせると収録曲数は41曲になりますが、この中で個人的に特に印象的だった曲についてレビューしたいと思います。
秋の一日
この曲は下成佐登子さんのデビュー曲で、このCDにはシングルバージョンが収録されています。
シングルバージョンは、ドラムやエレキベース等の入ったドラマティックなアレンジがなされているのに対し、ファーストアルバム「秋の一日」に収録されているアルバムバージョンは、アコースティックギターのみの伴奏で、歌も取り直されており、しっとりとした仕上がりになっています。
「秋の一日」は、沢田研二さんの「ヤマトより愛をこめて」を彷彿させるようなイントロでスタートし、八神純子さんの「甘い生活」のようなサビに向かって盛り上がって行く、マイナー調のバラードです。
デビュー曲という事もあり、声がとても初々しく、譜面に忠実に歌っているような真面目な印象を受けます。
先程、下成佐登子さんの歌声は、八神純子さんや本田美奈子さんに似ている気がすると書きましたが、こういったデビュー間もない頃の歌声が一番それに近いと思います。
雨
セカンドシングルですが、「秋の一日」よりもスローテンポなマイナー調の曲で、八神純子さんの「パープルタウン」のB面「漂流」に似た雰囲気を感じる曲です。
先程から何度も八神純子さんを引き合いに出していますが、下成佐登子さんの艶やかで伸びのある歌声は、八神純子さんに非常に似ていて、特に「う」「お」行の発音から、その雰囲気を感じ取れます。
悲しみのアクトレス
やさしく包まれるようなゆったりとした曲です。
Disc 1には、こういった曲調の曲が何曲もありますが、その筆頭に上がるのは、この「悲しみのアクトレス」ではないかと思います。
下成佐登子さんの艶やかで伸びのある声が非常に映える曲で、聴いていると胸のすくような気分を味わえます。
夢物語
サードシングル「悲しみアクトレス」のB面の曲で、基本的にはマイナー調のバラードですが、サビで軽快なリズムを聴かせてくれます。
曲全体を通して、音の高低の差が激しく、聴いていて難しそうな曲だなと思いました。
その分、メロディーがとても印象的な曲です。
ためいきアベニュー
ミドルテンポの跳ねるリズムが特徴的なマイナー調の曲です。
曲のアレンジが、これまでの曲にはないシティポップ風で、井上鑑さんアレンジの寺尾聡さんの曲っぽい雰囲気を感じます。
この曲の歌い方は、八神純子さんというよりは、泰葉さんに似ているような気もします。
星になりたい
タオタオというパンダの生涯を描いた映画の主題歌ですが、内容を知らなくても、この曲を聴けば、大体どんな雰囲気の映画なのか想像がつくと思います。
「星になりたい」は、マイナー調の非常にドラマティックな曲です。
作詞作曲は下成佐登子さんではありませんが、聴いていると涙腺が崩壊しそうな曲です。
恋のエピローグ
アレンジ、メロディー共に大橋純子さんの「たそがれマイラブ」に似た雰囲気を持つ曲で、イントロから耳を惹かれてしまいます。
いつわりの愛
マイナー調のバラードで、メロディーから醸し出されるスウィングするようなリズムが心地よい曲です。
作詞作曲はCHAGE & ASKAの飛鳥涼さんです。
セプテンバー・メモリー
マイナー調のしっとりとしたポップな曲で、80年代アイドルが歌ってもおかしくないような曲調です。
編曲は、新世紀エヴァンゲリオンなどの音楽を担当した鷺巣詩郎(さぎす しろう)さんで、Disc 1全曲の中で、イントロ・間奏・アウトロが一番ドラマティックで印象的な仕上がりになっています。
Disc 2の収録曲について
Disc 2は、下成佐登子さんが歌うアニメやドラマの主題歌等ですが、これらの作品が持つ壮大な世界観を表現するのに、下成佐登子さんのスケールの大きい歌声は、とても合っていると思いました。
下成佐登子さんは、Disc 1よりもドラマの内容に合わせた色々な歌い方をしており、曲によっては、歌手のクレジットを見なければ、下成佐登子さんが歌っていることに気づかないかもしれません。
昔テレビで見た作品の主題歌が頭に残っているが、誰の何という曲か分からないということも良くありますが、もしかすると下成佐登子さんが歌っている曲の中に、こういった曲があるかもしれませんね。
私は、Disc 2に収録されているほとんどの作品を知りませんが、そういった中でも印象的だった曲を何曲か挙げておきます。
アニメ「小公女セーラ」の主題歌である「花のささやき」は、アニメ「ベルサイユのばら」の主題歌「バラは美しく散る」に似た悲壮感漂うドラマティックな曲で、下成佐登子さんの歌い方も自身の作品とは違うやさしさにかわいらしさが加わったような感じになっています。
NHK みんなのうたの曲「赤い帽子」は、どっしりとしたリズムにマイナー調のメロディーが乗る曲で、サビだけが何度も繰り返されるようなメロディーが頭から離れない曲です。
「Mrs.Melancholy」は、アンニュイな印象と壮大な印象を受けるゆったりとしたマイナー調の曲で、1986年に放送された連続ドラマ「愛の嵐」の主題歌です。
私はこの作品は見ていませんでしたが、この「〇の嵐」シリーズで、1988年に放送された高木美保さん主演の「華の嵐」は見ていました(*^-^*)
NHKアニメ「ロビンフッドの大冒険」の主題歌「星空のラビリンス」は、「きらきら星」をアレンジしたようなゆったりとした曲調で、下成佐登子さんのやさしい歌い方に癒される曲です。
まとめ
下成佐登子さんがデビューした1978年は、「UFO」を筆頭にしたピンクレディーの最盛期、沢田研二さんの「サムライ」、山口百恵さんの「プレイバック Part2」、渡辺真知子さんの「かもめが飛んだ日」、八神純子さんの「みずいろの雨」など、イントロから最後まで非常にインパクトの強い曲が世間にもてはやされた時代でした。
こういったヒットを飛ばしている歌手は、一年に数枚ものシングルをリリースしていきましたが、下成佐登子さんの場合は、一年に数枚シングルをリリースする年もありましたが、基本的には、一年に一枚のシングルリリースといった感じで、ヒットの波に乗り難い状況に置かれていたように思います。
デビュー後の下成佐登子さんは、大ヒットこそしなかったものの、無冠の帝王たる実力の持ち主なので、今回のレビューを読まれて少しでも興味を持たれましたら、是非、その歌声に触れてみてください(^^♪