2017年10月7日に、ソニーの新しいデジタル・オーディオ・プレイヤー(以下、DAP)NW-ZX300が発売されます。
9月6日よりソニーストアにて先行展示が始まったので、銀座のソニーストアにて、UI(ユーザーインターフェイス)の動きと共にその音質を確認してきました。ほんの僅かですが、NW-A40も試聴。
この記事では、NW-ZX2との音質差をチェックを主眼としたアンバランス接続のみのレビューとなります。バランス接続の音について知りたい方は、こちらの記事をご覧になってみてください。
NW-ZX300レビュー
NW-ZX300のポジション
かつて、10万を超えるDAPと言えば、HIFIMAN等のほんの一部の海外メーカーに限られていましたが、現在ではAK(Astell&Kern)を筆頭とする高級DAPの登場により、各メーカーのフラッグシップDAPの価格も10万円越えが当たり前のようになっています。
SONYのフラッグシップモデルは、大体5万円前後の価格だったのが、NW-ZX1の登場以後、その壁は破られ、NW-ZX2で初の10万円越え、昨年はNW-WM1A、NW-WM1Zが発売され、NW-WM1Zにおいては、約30万円とかなり天井が高くなってきました。
DAPにおける高音質を求めて、フラッグシップモデルが発売される度に買い替えをしていた方々も、ここまで高額になってくると、今までのようなペースで買い替えをするのは一部の人に限られ、多くの方々は、どこかで一線を引いているのではないでしょうか。それは、金額であったり、買い替えのペースを遅らせたり、音質はDAPに求めず、ヘッドホンアンプに投資したりと、色々な考えのもとにDAPと付き合っていると思います。
2015年にはNW-AシリーズとNW-ZX2の間を埋めるようにNW-ZX100が発売され、その音を聴いてみた時は、こういう元気な音も聴いていて気持ちがいいなと思ったり。
さて、今回発売されるNW-ZX300ですが、価格は約7万円で、NW-ZX1やNW-ZX100が発売された当時と同じぐらいの価格。この価格と名称から、NW-ZX100系統の音なのか、それともオーディオニュース等の開発者インタビューからすると、NW-WM1系統の音なのか、気になりますね。
NW-ZX300の外観
カラーはブラックとシルバーの2色展開。
表面がブラックなので、本体がブラックだとカラーの統一感があります。
シルバーも非常に美しい仕上がりで、ブラックより高級感を感じる方も多いのでは?
イヤホンジャックは本体上部に。NW-WM1シリーズのようなイヤホンジャック周りの出っ張りがありません。
本体下部もNW-ZX1、NW-ZX2のような出っ張りがなく、とってもスリム。
WM-PORTは本体下部の真ん中ではなく少し左寄り。
持参したNW-ZX2と大きさを比較してみたんですが、NW-ZX2よりもNW-ZX300は大分コンパクトで軽く、非常に持ちやすかったです。NW-ZX300は、高音質をコンパクトなボディーに凝縮し、いつでもどこにでも持ち歩くといった従来のSONY WALKMANが戻ってきたような印象を受けました。
NW-ZX300の操作性とUI
表面のパネルはマット仕上げですが、特に見づらい感じはなく、アルバムアートもきれいに表示されてます。何度も画面をタッチしていじり回しましたが、全くと言って良いほど、指紋による汚れが気になりません。
UIの応答速度は速く、ミスタッチもほとんど発生しないストレスフリーな設計。メニューはシンプルで、必要な機能に素早くアクセスでき、特に不満は感じませんでした。
NW-ZX300とNW-ZX2の音質比較
初めにお断りした通り、今回はアンバランス接続のみのNW-ZX2との音質比較となります。試聴にあたり、ヘッドホンはMDR-Z1000を、試聴曲は以下の曲を使用し、NW-ZX300で聴いた後、NW-ZX2で同じ曲を聴くという行為を何度か繰り返しました。
NW-ZX300はソースダイレクトをオンにした状態で試聴しました。なお、青字の曲はハイレゾ音源です。
- 淋しい熱帯魚(WINK)
- 残酷な天使のテーゼ(Director’s Edit.Version)(高橋洋子)
- ギミチョコ!!(BABY METAL)
- 今だけの真実(斉藤由貴)
- 卒業(斉藤由貴)
- 北ウイング(中森明菜)
NW-ZX300とNW-ZX2とでは一聴してはっきり分かるぐらいの違いがありました。
総じていうと、NW-ZX300はNW-ZX2と比べてベールを一枚剥がしたように明るい音色でクリア、全体的に音が締まっている、なめらかの音調という感じでした。
低音の力強さは感じますが決してドンシャリではなく、NW-ZX2比ではフラットに感じました。
解像度(音の鮮明度合い)は高く、芯の通ったしっかりとした音がはっきりと聴こえますが、音のエッジ(輪郭)を強調している感じはありません。
付帯音(音にまとわりつく空気感のようなもの)や、サ行の刺さり、音の荒々しさは全く感じられず、非常になめらかな音です。
音場は若干広めに感じましたが、これは使用するイヤホン・ヘッドホンによって感じ方が異なると思います。
音の距離は、顔面から近すぎず遠すぎずといった感じで、聴きやすい距離感でした。
NW-ZX2は、NW-ZX300をきれいに灰汁を取り除いたスープだとすると、若干灰汁が残っているという感じです。
音場は、NW-ZX300とそれほど変わらないと思いますが、NW-ZX300は音が全体的にしまっているので、音と音の間にすっきりとした空間があり、そのせいで、すっきりさわやかな印象を受けるのに対し、NW-ZX2は、音の線が太めで、その音像も大きく、隙間なく音が詰まっているため、音の迫力や音の濃厚さといった点は、NW-ZX2の方があると感じました。
この感覚は、かつて私がずっとレコードを聴いていて、初めてCDの音を聴いた時の感覚に似ています。
オーディオ的にはNW-ZX300の方がワンランク上だと思いますが、どちらが聴いていて気持ち良く感じるかは、人それぞれだと思いますので、気になった方は是非試聴されてみてください。
NW-A40について
NW-A40については少ししか試聴していないので細かくはレビューはできませんが、NW-ZX300と比べて気づいたことを少しだけ書いておきます。
まず、持った感じは超コンパクトで軽く、これぞウォークマンという感じでした。
画面はちょっと触れただけで指紋が結構ついたので、NW-ZX300のマット画面の秀逸さを改めて感じてしまいました。
音質はNW-A30シリーズよりも高音質になっているという事でしたが、今回、NW-A30シリーズとの音質比較はしていないので、その点は分かりません。ただ、NW-ZX300との音質差は、かなり大きく感じられました。
NW-ZX300では、全ての音にしっかりとした芯が通っているのに対し、NW-A40は、その芯が若干弱々しく感じ、特にシンバル、ハイハットといった高音部に、音の荒さを感じました。
まとめ
SONY NW-ZX300は7万円といった価格帯から、そのライバルは、onkyo、pioneer、fiio、AKの普及機辺り。
この中で音質と品質のバランスを考えると、NW-ZX300は頭一つリードしている感じです。
NW-ZX300はバランス接続がウリなので、バランス接続目的で購入を検討される方が多いと思いますが、中にはバランス接続に興味はあるけど、今後、購入するイヤホン・ヘッドホンをバランス接続できるものに限定したくないとか、バランス接続用の高品位なケーブルに散在したくないといった理由から、アンバランス接続を主として使用するという考えの方もいらっしゃると思います。
バランス接続をしないなら、NW-A40シリーズでいいのでは?という疑念も湧きますが、上記のように、アンバランス接続での音質差は大きく、NW-ZX300をアンバランス接続を主たる目的として使用しても、十分な高音質で音楽を楽しむことが出来ます。
高音質で快適なUI、手ごろな価格と持ち運びが苦にならな重さ・大きさのNW-ZX300は、この価格帯以上のDAPを持っている人でも欲しくなるような超ハイコストパフォーマンスDAPです。
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