「泣くがいい。声をあげて泣くがいい。」
かつて、Yngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)が在籍した、Alcatrazz(アルカトラス)の1stアルバム「No Parole From Rock’n’roll」の邦盤には、こんなキャッチコピーが付けられていました。
「泣きのギター」というと、マイナースケールの感傷的なメロディーが思い浮かびます。
この手のギタリストは、メロディー作曲能力やチョーキングやビブラート等の感情を表現するテクニックに長けており、リスナーに強烈なインパクトを与えてくれます。
今回は、こういった「泣きのギター」を堪能できる曲を何曲かピックアップし、それらの曲から受ける印象などを書いてみたいと思います。
おすすめ!泣き泣きハードロックギター~①
Gary Moore(ゲイリー・ムーア)
- The Messiah Will Come Again(After The War)
- The Loner(Wild Frontier)
- Still Got The Blues(Still Got The Blues)
- Parisienne Walkways(Back on the streets)
- One Day(Ballads & Blues 1982-1994)
どの曲もバラードで、哀愁のメロディーを堪能できる曲です。
1~2曲目はインストです。
3~4曲目に関しては、「Ballads & Blues 1982-1994」というベストアルバムにも収録されています。
ゲイリー・ムーアのギターは、まるで俳優が哀愁のある演技をしているかのような、人の感情表現にかなり近い雰囲気があります。
ギターの歪みやトーンコントロール、ピッキングの強弱やチョーキング・ビブラートなどのテクニックが、ゲイリー・ムーアの心情をストレートに表現しています。
レスポールギターから放たれる図太く、そしてどこまでも伸びていくロングトーンは、泣きのギターというより、大泣きギターという様相を呈しています。
上記4曲目の「Parisienne Walkways」は、「パリの散歩道」という邦題が付いていますが、ベストアルバムである「Ballads & Blues 1982-1994」に収録されているのは、ライブバージョンであり、より生々しい演奏を聴くことが出来るので、おすすめです。
ちなみに「The Loner」は、コージーパウエルのソロアルバム「Over The Top」に収録されていた曲で、ゲイリー・ムーアが自身のアルバム「Wild Frontier」でカバーした形になっています。
「Over The Top」の「The Loner」は、クレム・クレムソンがギターを弾いています。
ゲイリー・ムーアの「The Loner」を大泣きと表現するなら、クレム・クレムソンの「The Loner」は、そのブルージーな雰囲気から、悲しい気持ちを胸に閉じ込めたまま日常を送っている、そんな感じがします。
Yngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)
- Icarus’ Dream Suite Op.4(Rising Force)
- Save Our Love(Eclipse)
1曲目の「Icarus’ Dream Suite Op.4」は、アルビノーニのアダージョ(レモ・ジャゾット作)というクラシック曲のカバーです。
ギターの歪みが最小限で、かなりクリーンな音で美旋律を奏でています。
ハードロックが嫌いと思われている方でも、この曲に関しては拒否反応は出ないと思います。
イングヴェイの曲は、テンポの速い曲でも、そのメロディースケールや振幅の大きいビブラートから泣きを感じることが出来ますが、ここでは、その泣きが分かりやすいバラードを選曲しました。
イングヴェイ・マルムスティーンは、悲しみの美旋律の作曲能力に長けたギタリストですが、アルバムを追うごとに、その多様性は薄れ、お決まりの速弾きフレーズが多くの曲に見られるようになってきました。
イングヴェイ・マルムスティーンの凝縮されたメロディーセンスを知るには、まず1~4枚目、もしくは8枚目ぐらいまでのアルバムを聴いてみてください。
SCORPIONS(スコーピオンズ)
- We’ll Burn The Sky(Taken By Force)
- Still Loving You(Love At First Sting)
スコーピオンズは、大まかにいうとギタリストが、Uli Jon Roth(ウリ・ジョン・ロート)の時と、現ギタリストであるMatthias Jabs(マティアス・ヤプス)の時で、大分雰囲気が違います。
メロディーを重視する姿勢は一貫していますが、そのアレンジ方法が異なり、ウリの時はクラシカルな、マティアス加入後はストレートなアメリカンロック的な感じになりました。
1曲目の「We’ll Burn The Sky」は、ギタリストがウリの時の楽曲で、サビに向かって盛り上がって行く、マイナー(悲し気な)調のパワーバラードです。
サビのギターのハモリや、思いっきりチョーキングするウリのフレーズに心揺さぶられます。
イングヴェイ・マルムスティーンも、ウリに憧れていたことから分かるように、ウリのギターフレーズはクラシカルで美しく、時には高速に、そして非常になめらかに流れていきます。
ウリのギターフレーズが気に入られたなら、ソロアルバム「Beyond The Astral Skies」に収録されているバラード「I’ll Be There」も是非聴いてみてください。
2曲目の「Still Loving You」は、ギタリストがマティアスの時の曲で、「We’ll Burn The Sky」と同系列の曲ですが、メロディーやアレンジがより洗練され、聴きやすくなった印象です。
ソロは基本的にマティアスが弾いていますが、アウトロ(曲の最後の部分のソロ)は、ルドルフ・シェンンカーが弾いています。
歌メロ、ギターフレーズ共に美しく、2人のギタリストのゆっくりとチョーキングに感涙必至です。
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