今回は、プログレの雄により結成されたスーパーバンド ASIAの3rdアルバム「ASTRA」を紹介したいと思います。
ASIAの名盤といったら、1st「ASIA」、2nd「ALPHA」を挙げる方のほうが圧倒的に多いと思いますが、個人的には、この3rdアルバム「ASTRA」が本来のASIAの音楽のような気がして、いつもASIAのアルバムを聴きたいと思った時、この「ASTRA」をチョイスすることが多いです。
ASIAと「ASTRA」について
ASIAとは
ASIAは、1982年にアルバム「ASIA」(邦題「詠時感〜時へのロマン」)でデビューしたイギリスのバンドです。
1980年頃、プログレ人気が下火になり、解散するプログレバンドも多々ありました。そういった中、プログレバンド出身者を集めて結成されたのがASIAでした。
YES,ELP,KING CRIMSONといったプログレバンドの中でも有名なバンドからスティーヴ・ハウ、ジュフ・ダウンズ、ジョン・ウェットン、カール・パーマーといったメンバーが集結したため、ASIAは大きな注目が集まっていました。
当初のASIAの音楽性、コンセプトは3分半のプログレポップロック。
3rdアルバム完成前に、ギタリストのスティーブ・ハウが脱退し、3rdアルバムリリース後、アルバムの売り上げ不振等の要因もあり、ボーカル兼ベースのジョン・ウェットンが脱退。
その後も、キーボードのジェフ・ダウンズを中心としてASIAは存続しますが、実質、ASIAは3rdアルバム「ASTRA」で解散ということになります。
2012年にASIAのオリジナルメンバーで「XXX~ロマンへの回帰」というアルバムがリリースされ、その後も数枚のアルバムをリリースしましたが、再度スティーブ・ハウが脱退したりと、メンバーの個性が強いせいか、中々安定感に欠けるバンドでもありました。
2017年1月31日にボーカル兼ベースのジョン・ウェットンが他界し、エイジアの顔である歌声は途絶えてしまいましたが、現在(2019年)でもジェフ・ダウンズ、カール・パーマーを中心にエイジアは活動を続けています。
3rdアルバム「ASTRA」について
1~3rdアルバムはそれぞれ雰囲気が異なりますが、その大きな要因は、ギタリストであるスティーブ・ハウにあると思います。
1stアルバム「ASIA」は、ポップを基調としながら所々に入る変拍子、曲の展開、そして、スティーブ・ハウの曲全編に渡るオブリガード(合いの手のようなもの)も特徴でした。
スティーブ・ハウは、他のハードロックギタリストのように、低音弦でバッキングをズンズン弾きません。
2ndアルバム「ALPHA」は、1stとサウンド的には同じように聴こえますが、あまり変拍子や曲の展開がありません。
これは、スティーブ・ハウがこのアルバムに関して、一切作曲に関わっていないことが要因かもしれません。
3rdアルバム「ASTRA」は、スティーブ・ハウの代わりにマンディー・メイヤーというギタリストが参加しています。
マンディー・メイヤーは特段、特徴的なフレーズを弾くギタリストではないので、完全にジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズのサウンドとなっています。
「ASTRA」おすすめポイント
ASIAを聴いたことのない方が、ASIAに期待するサウンドはどういうものでしょうか?
雑誌やインターネットでASIAを知り、プログレメンバーが集結したバンドということであれば、DREAM THEATERのようなバンドを想像するかもしれません。
私は、今ではASIAの1~3rdアルバムの全てが好きですが、初めてASIAの1stアルバムを聴いた時に思ったのは、期待外れ、ただのポップス…でした。
1stアルバムは、プログレの雄が集結したこと、当時流行り始めたMTVでのシングルカット曲「Heat Of The Moment」のPVの露出等が功を奏して、爆発的にヒットしました。
しかし、このヒットは多くのハードロック、プログレファンに支えられたヒットではなかったような気がします。
1stアルバムの音を、丁度良いポップスとプログレのブレンドとみるか、中途半端とみるかで評価は変わると思いますが、当時、少なくとも私はハードロックのアルバムとして捉えることが出来ませんでした。
ただ、私がこの1stアルバムを聴いていいなと思ったのは、ジョン・ウェットンの声質の良さ、メロディーの秀逸さ、それを一層高めるかのようなキーボードの煌めく音色と美しいフレーズ。
3rdアルバム「ASTRA」では、まさにそのサウンドが全編に散りばめられています。
美しいメロディーと煌めくキーボード、そして1st、2ndアルバムよりも増したサウンドの重み。
1stアルバムのちぐはぐしたサウンドより、3rdアルバム「ASTRA」のようなサウンドの方がバンドの方向性としては分かりやすい気がします。
そういう理由もあって、「ASTRA」をASIAのおすすめアルバムとしました。
「ASTRA」を聴いた後、1stアルバムを聴いてみて、プログレに興味を持たれた方は、スティーブ・ハウを追ってYESへ、ジョン・ウェットンの声とメロディーに魅了された方は、ジョンウェットンのソロアルバム「VOICE OF MAIL」や以前に所属していたバンドのKING CRIMSONのアルバム「RED」、Uriah Heepの「Return to Fantasy」、U.K.、ジェフ・ダウンズのメロディアスで煌めくキーボードにときめいたならThe Buggles(バグルス)といった具合に追っていくと良いと思います。
ちなみに、私が「ASTRA」の中で一番好きな曲は「Wishing」。
ハード寄りなポップバラードといった曲調ですが、ASIAの肝であるジョン・ウェットンの少し枯れた声とサビの哀しげなメロディーに強く胸を打たれます。
まとめ
余談ですが、1992年頃、スティーブ・ハウがYESのライブで来日した時、私は偶然、職場でスティーブ・ハウに会いました。友人が「ASIA好きです。応援してます!」と言ったら、ハウに「YESも聴いて」と言われてしまいました(*^^)v