AH-MM400は発売が2015年1月とだいぶ前の製品ですが、現在のハイファイな音はちょっとしっくりこないという方におすすめのヘッドホンです。
AH-MM400は、DENON(デノン)の中でも「MUSIC MANIAC」という音質志向の方へ向けたラインナップの一つで、発売当時の価格は4万円近く。現在では店舗によっては2万円を切るぐらいの価格に落ち着いています。2016年には、声優の上坂すみれさんが化粧箱にプリントされた限定パッケージも発売されました。
このヘッドホンの最大の特徴はハウジングに木材を使用していること。これにより一体どんな音が出るのか、装着感や製品仕様等を含めて書いてみたいと思います。
AH-MM400レビュー
AH-MM400の仕様・装着感について
AH-MM400は、40㎜ダイナミックドライバーを搭載した密閉型ヘッドホンで、ハウジング(イヤーカップ)に、アメリカンウォールナット材を使用しています。
ハウジング表面は、あまりツルツルテカテカしている感じではなく、自然な木の温もりを感じさせるような仕上げになっています。
ケーブルは2本付属していて、1本は通常の3.5mmステレオミニプラグ、もう1本はiOSデバイスに対応したリモコン付きで、イヤホン本体側のプラグも通常の3.5mmとなっています。
ハウジングは内側に折り曲げてコンパクトに収納することが出来ます。重量は310g。最近のポータブルヘッドホンと比べるとやや重めですが、今年発売(2018年)されたDENONのAH-D1200(重量260g)と比べてもそれほど大差ない印象でした。
イヤーパッドは縦長で開口部が大きいため、耳がイヤーパッドに挟み込まれるようなことはほとんどないと思いますが、深さは少し浅いので、人によっては若干耳が当たるかもしれません。
クッションは頭頂部を含めて快適な柔らかさがあり、側圧もキツいと感じることはなく、総合的に見て、装着感についてはかなり優秀と言えます。
AH-MM400の音質について
試聴に当たり、DAPはSONY NW-ZX2を使用しました。
試聴曲は、主に斉藤由貴「卒業」、BABYMETAL「ギミチョコ!!」、高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」等で、ファイル形式はflacです(「残酷な」~はハイレゾ)。
ウッドハウジングを見て、温もりみたいなものを感じることと思いますが、音の傾向もそれと同じで、最近のトレンドであるハイファイな音とは全く違う印象です。
大雑把に言うと、アナログレコードやカセットテープの音をコンポで聴いているような音。
肉厚で生々しいボーカル、ドスンと力強く空気感を伴った低音、耳障りなほど主張しすぎない柔らかい高音。
音場は左右と上方向に広めで、奥行きはさほど感じられませんでした。
80年代がリアルタイムだった方は分かると思いますが、レコードからCDに切り替えた時、ノイズがなくクリアな音に感動した反面、何か冷たさや音が若干痩せて聴こえる感覚がありました。
もう数十年もCDの音を聴いているので、特別CDの音が冷たいなんて感じなくなりましたが、このAH-MM400で音楽を聴いていたら、アナログで音楽を楽しんでいた時に戻ったような気分になりました。
この価格帯だと、オーディオテクニカのATH-MSR7bや、SONYのMDR-1AM2がライバルとなると思いますが、それらと比べると音のエッジは丸めで、フワーッとした温かい音場の空気、シンバル等の高音部もそれ程主張して来ないので、一聴すると解像度は低めに感じられます。
ただ、実際は解像度が低いということはなく、細かい音まできちんと聴こえます。
現在のハイファイな音を聴かせるヘッドホンとは聴かせ方が違うだけで、アナログを聴いて育った私の感覚では、AH-MM400の音はとても自然で高音質に思えました。
まとめ
AH-MM400は、温かみのあるアナログライクな音。
デジタル化によってアナログ感が減退した昭和歌謡やジャズ等の懐かしい音源を当時のような感覚で聴くにはもってこいのヘッドホンです。
この価格帯でこういった音を出すヘッドホンは稀有な存在なので、音楽の好みと合致すれば迷わず買いの逸品です。