毎年たくさんのデジタルオーディオプレイヤー(以下、DAP)が発売されますが、使い勝手の良さと音質のバランスの取れたDAPはそう多くはありません。高音質を謳ったDAPの中には、急に画面が固まる・ブラックアウトする、持っていられない程熱くなる、文字化けする等、製品としての完成度が低いものも沢山あります。
もしバランス接続はいらないからアンバランスで高音質なDAPが欲しいというのであれば、2015年に発売されたSONY NW-ZX2がおすすめです。
NW-ZX2は当時実売価格12万円前後というSONY初の10万円越えのDAPとして話題を集めました。
同価格帯で他社がバランス接続で高音質化を狙う中、NW-ZX2は高音質化のためのパーツ全てをアンバランス接続のために使ったアンバランス最高音質を目指したSONYのフラッグシップ機。それゆえアンバランス接続の音質は、現行のDAPと比べても全く引けを取りません。
現在は生産終了のため中古でしか手に入りませんが、本体の作りもしっかりしてるため、バッテリー交換程度のメンテでこの先まだまだ使える高級DAPです。
現在NW-ZX2を所有していて買い替えようかな…なんて思っている人は
ちょっと待った!裏機能のクリアフェーズは試しました?
これ結構キテます。バランス接続の時に眼前の空間がパッと開ける感覚を味わえます。この設定の仕方は後述します。
さて、NW-ZX2のおすすめポイントは、
- DAPとして十分な駆動力
- 高い解像度と厚みのある音質
- GND接続によるバランス接続に迫るチャンネルセパレーションの良さ
- DSEE HXによるアップコンバート(192kHz/24bit相当)
- 充電池の持ちがいい(リニアPCMで61時間)
- 高速で日本語並びの非常に使いやすいUI
- 本体メモリ・microSDカードの容量ギリギリまで曲を入れても動作が重くならない
- 動画を高音質・高画質で楽しめる
- 裏技で使えるようになるクリアフェーズで解像度アップ
以下でNW-ZX2の特徴、現行DAPと比べてもおすすめな理由を説明したいと思います。
SONY NW-ZX2の音質レビューと裏機能クリアフェーズの設定方法
NW-ZX2の音質レビュー
NW-ZX2の音質を簡潔に言うと、豊潤で力強いアナログレコードのような音質。
音の質感に限って言えば、デジタル化によって欠損した音源を元のマスターテープの波形に近づけるハイレゾ音源そのもののような滑らかさ・柔らかさがあります。
こういった温かみを持ちながらクリアネス&キレのある音を実現できたのは、肉厚なアルミフレームの採用、フレームや基盤に銅を使用していること、大型のコンデンサーやNW-ZX2専用の大型バッテリーを採用したことなどなど。
純粋なバランス接続は出来ませんが、イヤホンジャックは4極になっており、3.5mmGND(グラウンド)分離ケーブルを使えば、バランス接続に迫るスッキリとした音の分離を体感出来るのもNW-ZX2の魅力の一つ。
NW-ZX2に限らず、ウォークマンには音質をハイレゾ相当にアップサンプリングするDSEE等の高音質化機能がたくさん詰まっていますが、NW-ZX2に関して言えば、こういった機能を全てオフにした素の状態で高音質ぶりを堪能することが出来る極上の仕上がりになっています。
NW-ZX2は発売された当時、他社のDAPと比べて出力が低い!なんて話もよく見かけましたが、NW-ZX2に使われているフルデジタルアンプS-Master HXは省電力ながらも高音質で再生できる技術が詰め込まれており、ポータブル環境で使用することを目的として作られたイヤホン・ヘッドホンで出力不足を感じることはありません。
これ以上の音の力強さや空間を求めるなら、NW-ZX2以上の価格のDAPを買い漁るより、素直にアンプを導入したほうが幸せになれると思います。
NW-ZX2の細かいメカニック的な部分はソニー公式ページでチェックしてみてください。
★ソニー公式NW-ZX2商品解説ページはこちら
裏機能クリアフェーズの設定方法
クリアフェーズ(Clear Phase)とは、使用しているイヤホン・ヘッドホンに合わせて特性を最適化、自然な広がりを得られる機能ですが、基本的にはソニーの特定のイヤホン・ヘッドホンでしかその効果は得られないようになっています。
しかし、手持ちのイヤホン SHURE SE846でクリアフェーズをオンにしてみたところ、チャンネルセパレーションが良くなり、バランス接続をした時のような目の前の空間が開ける感覚を味わえました。
使用するイヤホン・ヘッドホンによっても効果は異なると思いますが、クリアフェーズの導入方法を書いてみたので、気になったらぜひ試してみてください。
設定方法① ショートカットアプリをインストールする
ショートカットアプリならどれでも構いませんが、ここではGoogle Playストアから評価の高いQuickShortcutMaker(無料)を検索し、インストールします。
インストール出来たらQuickShortcutMakerのアイコンをタップ。
画面上部の「アクティビティ」に合わせスクロールし、音質設定をタップ。
すると5つの音質設定アイコンが出てくるので、その中の2つある「音質設定 サウンドエフェクト」の2つ目をタップ。
画面下の「作成」をタップすると画面トップに「音質設定」のアイコンが表示されます。
このアイコンをタップし、「ClearPhase」の文字をタップすると設定がオンになります。
現行DAPを蹴散らすNW-ZX2の秀でたUI
視認性の良いトップページ
純正音楽再生アプリ「W.ミュージック」のトップページはこんな感じです。
特に「最近追加した曲」はありがたい機能で、これがないと、時々「この間転送したアルバムは何だっけ?」なんてことに。
フォルダー管理している方が使い易いように、フォルダー再生機能もあります。
背景は黒から白に変更することが可能です。
任意のアルバム等をTOP画面に登録できる
お気に入りのアルバム、アーティスト、曲をTOP画面に登録することができるため、好きな曲に素早くアクセスすることができます。これをショートカット機能といいます。
登録方法は簡単。例えば、アーティストで検索し、TOP画面に登録したいアーティストが見つかったら、そのアーティスト名を長押しすると、いくつかメニューが出てきます。
その中の「ショートカット作成」という部分をタップするとアーティストがトップ画面に登録されます。
おまかせチャンネルで登録した曲と新鮮な気持ちで出会うことができる
NW-ZX2本体に「12音解析」機能があり、解析後上記のようなチャンネルに曲が振り分けられます。
チャンネルは以下のような14種類があります。
自分で選曲すると、数十曲の同じ曲ばかり聴くことになりがちですが、それが飽きた時に、こういった自動選曲機能があると、重宝します。
次の曲は何だろうというワクワク感もあります。
カバーアートビューはレコード世代を楽しませてくれる
レコード世代の方には分かってもらえるかもしれませんが、ジャケットってとても大事。
昔は試聴して買うということが出来なかったので、時にはジャケットのアートワークに魅かれて「ジャケ買い」ということをしたこともあります。
ジャケットが素晴らしいレコードは、部屋に飾ったり、レコードを聴きながら眺めたものでした。
この「カバーアートビュー」という機能は、自分の部屋にレコードジャケットを散らかしたような感じで鑑賞することができ、任意のジャケットをタップするとそのアルバムを聴くことが出来ます。
邦楽を聴く人にはありがたい!あいうえお順の並び
DAPでABC、カナのあいうえお順、漢字コード順という並びのものも多いのですが、私のように邦楽・洋楽といった色々なジャンルの曲をたくさん詰め込んでいる場合は、こういった並びでは非常に検索がしづらい。
NW-ZX2では、アーティスト、アルバム等は、数字、ABCから始まり、ひらがな・カタカナ・漢字を含めた読み方通りのあいうえお順に並びます。
例えば、Berryz工房をSONY MEDIA GOという音楽管理ソフトで「Berryzkoubou」と読みを設定した場合はABCの欄に並び、「ベリーズコウボウ」と読みを設定した場合は、あいうえお順の欄に並びます。
超高速スクロール検索でストレスなし!
アルバムやアーティストがたくさん入っていると、一番下の方にあるものにたどり着くには、相当スクロールしなければなりません。
NW-ZX2は、スクロールを始めると、画面右に青く太いバーが現れます。このバーをつかんで、上下に動かすと超高速でスクロールしてくれます。
超高速スクロール中は、画面中央にA,B,C、ア、イ、ウ等が表示され、今どの辺りをスクロールしているか知らせてくれます。
検索ボックスによる検索も可能!
画面上部に虫眼鏡のマークがありますが、ここをタップすると、文字入力画面になり、ここに曲名、アーティスト名、アルバム名を入力することで素早い検索が可能となっています。
文字は、一文字入れるごとに検索内容が絞られてくるため、全部文字を入力しなくても任意の曲を探し当てることができます。
例えば、乃木坂46の「何度目の青空か?」を検索したい場合、「なんど」という文字を入れただけで探し当てることができます。
本体とmicroSDの曲を混ぜたプレイリストの作成・編集ができる
現行(2020年1月現在)のウォークマンは、ウォークマン本体でプレイリストを作成する場合、本体メモリーに入っている曲とmicroSDカードに入っている曲を混ぜたプレイリストを作ることは出来ませんが、
NW-ZX2なら出来ます!
もちろん登録した曲の削除、並び替え、追加も自由自在。
プレイリストの作成数や1つのプレイリストに追加できる曲数の限度は不明ですが、現在プレイリストを20程度、1つのプレイリストに500曲程度入れることが出来ています。
予想ですが、プレイリストは最低でも100程度、1つのプレイリストに収録できる曲は1000曲程度はあると思います。
少なくともかつてのウォークマンのように、ブックマークという簡易プレイリスト作成数は5つ、1つのブックマークに入れられる曲数は99曲までといった制限はありません。
(追記)
アップデートにより、現行ウォークマン(NW-ZX500 NW-A100)でも、本体&microSDの楽曲を混ぜたプレイリスト作成が可能になったようです。
本体・microSDカードに転送した曲の削除ができる
たまにシャッフル等で音楽を再生している時など、この曲はいらないなと思うことがあります。そんな時、いちいちパソコンを立ち上げて曲を削除するのは面倒。
NW-ZX2はウォークマン本体で曲を削除することができます。
TOP画面のフォルダーを開き、そこに表示されている任意の曲を長押しするとメニューが出てきて削除することができます。
NW-ZX2の嬉しい機能をピップアップ!
美しいトリルミナスディスプレイ&高音質で動画を楽しめる
ソニーの液晶テレビ「ブラビア」で使われている技術をモバイル用に最適化したトリルミナルディスプレイで動画や写真を美しく再生出来ます。
特に黒の表現が秀逸で黒が美しく沈み込み、その美しい動画をNW-ZX2の高音質で楽しめます!
NW-ZX2に取り込んだ写真も美しく再生され、NW-ZX2の高音質で音楽を楽しみながらスライドショー機能をオンにすれば、あなただけのスライドショー動画の出来上がり。
歌詞を愛する人にはうれしい歌詞表示機能
歌詞表示はカラオケの練習だけでなく、歌詞に大きな意味を感じている人にとってはうれしい機能。
レコード時代は、曲を聴きながら歌詞カードを眺め、作詞作曲、編曲は誰なのかとか、耳で音を聞き、目で歌詞を見ることによって、その曲の世界に入り込むことが出来ました。
以前はウォークマン用に歌詞ピタという有料の歌詞表示サービスがありましたが、現在は中止となっています。ただ、曲に合わせてスクロールする歌詞を自作することは出来ます。
SONYの音楽管理ソフトMEDIA GOをお使いの方なら、歌詞の入力、歌詞のタイミングに合わせて簡単に時間を設定する(タイムスタンプ)ことが出来る機能が付いているので試してみてください。
「プロパティ」→「歌詞」→「歌詞の編集」の順でクリックしていくと歌詞作成画面になります。
詳細はSONYのサポートページに記載されています。
MEDIA GOでなくても、歌詞にタイムスタンプを設定するフリーソフトはたくさんあるので、気になったらググってみてください。
転送ソフト不要!D&Dで曲の転送ができる
ソニーの音楽管理ソフトは結構重いものが多く、管理している楽曲数が多い人ほど、その不便さにイライラしていると思います。MEDIA GOはかなり軽快な動作でソニーの歴代音楽管理ソフトの中で1番の出来でしたが、現行のMusic Center For PCは…💦
NW-ZX2を含めて現行のウォークマンはD&D(ドラッグ アンド ドロップ)に対応しているので、ソニーの音楽管理ソフトに縛られることなく楽曲の転送をすることが出来ます。
D&Dで曲を転送する場合、アーティスト→アルバムといったフォルダ構成にせず、任意のフォルダを作ることが出来るので、工夫次第ではより快適に楽曲を管理することが出来ます。
例えば、私は80年代アイドルの曲は「アイドル(S)」、久保田早紀さんなどの80年代ポップスは「懐かし」とジャンルのタグ付けをしています。ちなみにこの「S」は昭和の「S」です。
この2つのジャンルの曲は、「懐かし・アイドル(S)」というフォルダを作って、そこに入れています。
これにより、80年代アイドル又はポップスを別々に聴きたい場合は、W.ミュージックTOP画面のジャンルから再生し、2つのジャンルをまとめて聴きたい場合は、TOP画面のフォルダーから再生するといった方法をとることができます。
バッテリー切れでガッカリはほとんどなし!長時間持続するバッテリー
かつてのアンドロイドウォークマンはバッテリーが最大のネック。私が以前の所有していたSONY NW-F887は使い方にもよりますが、夜音楽を聴きながら眠ってしまうと朝バッテリーは切れていて、通勤時には使えないということがも多々ありました。
NW-ZX2はこういったアンドロイドウォークマンの欠点を徹底的につぶした機種で、ヘビーに動画を見てもバッテリーは相当持ちます。
高音質DAPと呼ばれるものの多くは、10時間前後しかバッテリーが持ちませんが、高音質をキープしながらロングバッテリーであるNW-ZX2はこういった点でも優位性があります。
NW-ZX2は、例えばWAVなら61時間程度の電池持続時間があります。
実際はどのぐらい持つのかは分かりませんが、普通に使っていて、バッテリーがやばい!と思ったことはほとんどなく、別途モバイルバッテリーを携帯する必要もありません。
昨年(2019年)、アンドロイドを搭載したウォークマン(A100,ZX500)が復活しましたが、バッテリーに関しての口コミがあまり良くないところを見ると、かつてのアンドロイドウォークマンに戻ってしまった気がします。
容量ギリギリまで転送しても動作が重くならない
私は過去に色々なDAPを購入してきましたが、大体容量ギリギリ近くになると動作が重くなり、スクロールがついてこないストレスMaxな現象に見舞われてきました。しかし、このNW-ZX2に関してはそういったことはありません。
本体メモリー128Gに加え、microSDカードを使用することができ、その動作はソニー公式ページより20,000曲まで保証されています。現在、私のNW-ZX2には本体・microSD併せて12,000曲ほど入っていますが、快適な挙動です。
NW-ZX2の中古相場とおすすめパーツ
現在(2020年1月)のNW-ZX2の中古相場は、3万円台。Amazonなど、探せばまだまだ中古は十分手に入ります。
★Amazon NW-ZX2中古ページはこちら
ディスプレイ保護フィルムやケース、先程紹介した3.5mmGND分離ケーブルといったオプション品に関しては、現在でも各種新品で売られているので、NW-ZX2自体が中古であっても新品を買った時のように悩みながら選ぶことが出来るのは嬉しい限り。
3.5mmGND分離ケーブルも現行品で色々選ぶことが出来ますが、初心者の方ならonsoというメーカーのケーブルが品質も良く低価格なのでおすすめです。
NW-ZX2のバッテリー交換は現在でもソニーで受け付けており、価格は7,800円(税抜き)。
詳細はソニーの公式ページで確認してみてください。
★ソニー公式ページNW-ZX2電池交換料金の目安はこちら
まとめ
音楽好きの方にとって、DAPは毎日のように持ち歩いて楽しむ生活必需品。それだけに携帯に不便を感じないような大きさ・重さ・快適な使い勝手なども音質と併せて重要です。こういったトータルバランスで言うなら、SONY NW-ZX2は現行DAPと比べても今なおトップを張ることのできるDAP。
NW-ZX2は内部パーツの関係から100時間のエージング(慣らし運転)が必要ですが、中古ならエージングも済み、すぐに本領を発揮した音質を楽しむことが出来ます。もしバランス接続でなく、通常のイヤホンジャックで高音質を楽しめるDAPが欲しいと思わてれいるなら、NW-ZX2もぜひ候補に入れてみてください。
ちなみに、上記でNW-ZX2のスクショを乗せてますけど、これは電源ボタンと音量マイナスボタン同時押しでスクショを取ることが出来ます。